2010年1月29日金曜日

ウィーン・フィル初体験記

  1. フランツ・シューベルト:交響曲第5番変ロ長調
  2. ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番イ長調
  3. フランツ・シューベルト:交響曲第7番ロ短調「未完成」

ニコラウス・アーノンクール指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、レイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ)

1月27日 ザルツブルグ祝祭大劇場 19:30~

モーツァルト週間の目的の一つは、とにかくウィーン・フィルを聞くこと。実は今まで一度も生でウィーン・フィルを聞いたことがなかった。オタクとしては、とにもかくにも一度は生でウィーン・フィルを聞きましたという「アリバイ証明」がしたかったのだ。ついでに言うと、アーノンクールもアンスネスも生で聞いたことがない。そこで3者いっぺんに初体験ができて、絶対にハズレなさそうなプログラムということでこれを選択。125ユーロと高かったが…。こんな高いチケット、買ったことがない。でも少なくともネーム・ヴァリューの点からいえば、125ユーロもうなずけるようなおそらく現在最高の組みあわせで、これで演奏が面白くなかった日には、さてどうしようか…。

ところが、結論から言えば「さてどうしようか…」となってしまったのだ。聞いていて、なぜか今一つのめりこめない。もう少し正確に言うと、インスピレーションが湧いてこないというのか。昨日のミンコフスキは、一音一音がインスピレーションの塊だったのに。

もちろんウィーン・フィルの弾くシューベルトとモーツァルトであるから、耳をそばだててしまう瞬間は何度もあった。ニュアンスに富んだ音の鳴らし方、切り方。しかし同時に、意外と平凡な音を出すなあという瞬間も何度かあったことも事実。結局、彼らの出す様々な音が自分の中で焦点を結ばず、一つの音楽にならない。今日演奏しているのはウィーン・フィルだったよねと、演奏の最中にプログラムを確認したくなったほど。

もちろん、イチローや松井秀喜でも全くヒットの打てない日もあるわけで、ウィーン・フィルだからと言って、毎回毎回、そんなにすごい演奏をしているわけではあるまい。今日の出来は野球に例えると、全打席凡退というわけではもちろんないが、4打数1安打といったところか。世界一と言われる底力を発揮するには至っていなかった。

強烈なアクセントのついた音の出し方に、かつてのアーノンクールらしさが出ていたが、でもこの人は、現在ではむしろ良くも悪しくも巨匠風の大きな構えの演奏を聞かせる人なのかもしれない。「未完成」の頭など、「えっそんなゆっくり始めるの!?」というぐらい遅めのテンポ。かつて激しい賛否両論を巻き起こした、アーノンクールらしい「汚い音」も特に聞かれず。聞く前から予想はついていたが、同じ「古楽器派」と言っても、ミンコフスキとアーノンクールでは全然方向性が違う。そもそも「古楽」などというくくり方自体が、すでに古いのだろう。一方、アンスネスはむしろフォルテピアノを意識したような、あえて華を抑えたような弾き方。指揮者とピアニストの間で、いささか方向性に違いがあったように感じたが、気のせいだろうか。

そういえば、ピアノ協奏曲の長い序奏部分で、アンスネスがすでにオーケストラの低音部をなぞるようにして音を出したように聞こえたが、これも気のせいか?へえ、こんなやり方もあるんだと思いながら聞いていた。いや、別に大した問題ではないのだが。

ついでに書いておくと、今日はコンマスではなくコンミス、つまり女性のコンサートマスターだった。とうとうウィーン・フィルのコンサートマスターの席に、女性が座る時代が来たか。

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