2010年1月29日金曜日

1月27日(水)~モーツァルト週間2010を聞きに行くⅣ


朝、ザルツブルグの一番の観光名所と思われるホーヘンザルツブルグ城へ向かう。この城、山の上から街を見下ろすようにしてそびえ建っていて、ロシアから来たものにはクレムリンのようにも見える。実際、クレムリンのようなものかもしれない。ところが今の季節、城に行くためのロープウェイは休業中。しょうがないので、ふもとにある大聖堂に行く。

今は観光客が少ないので、やっていなかったり部分的にしか公開していなかったりするところが多いのは残念だが、その代わり、一つひとつの名所はほかの人に邪魔されず(換言するとほかの人の邪魔をすることもなく)、ゆっくりと鑑賞することができる。大聖堂、カタコンベ、ザルツブルグ大司教の宮殿、パノラマ・ミュージアムと見てまわったが、いずれもゆっくりと味わうことができた。教会には巨大なパイプオルガンが設置されていたが、こういうのを見ると、西洋音楽の源が宗教音楽にあるという話を思いだす。大司教の宮殿では、モーツァルトの初期作品がいくつか初演されたらしい。その意味でも興味深いが、これ見よがしの派手な内装を見ていると、モーツァルトが大司教の権威を嫌ってザルツブルグから逃げだしたのも納得できる。ミュージアムは、特に最初の絵画の展示が気にいった。館内に流れていたプリペアード・ピアノの音(ジョン・ケージの作品?)と、抽象絵画が見事にマッチしていた。そんなに有名な画家はいなかったが、展示物の質は決して低くない。ザルツブルグの歴史を紹介するコーナーも、いろいろと見せる工夫がしてある。ただし充実しすぎて、いつものごとく最後のほうは息切れ。適当に飛ばさざるをえなかった。

その後モーツァルトの家に行ってみるが、この日は午後から休業。明日に回す。ただし横のお店の地下で、大量の楽譜を発見。狂喜して楽譜漁りを始める。その結果買ったのがベルクの「ヴォツェック」全曲。58ユーロ。日本でも1万円程度で売っているはずなのだが、抑えがきかなかった。

その後はホテルに戻り、ウィーン・フィルの演奏会に備える。40分ほど前に会場についたが、昨日以上に立派な服を着た紳士淑女の世界。もちろん、日本人と思しき姿もよく見かける。後ろのほうの席だったが、客席を観察すると、明らかに白髪、または髪の毛が薄くなっている頭が目立つ。ウィーン・フィルがドイル語圏(あるいはヨーロッパ)で持つ、社会的意味が窺える。

演奏については、別稿に記したとおり。しかし昨日のように、不安に苛まれることもなかった。演奏にそれほどのめりこめなかったからか。昨日の私は、幸せだったのかもしれない。

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