- グスタフ・マーラー:交響曲第3番ニ短調
1月10日 フィルハーモニー大ホール 19:00~
最近クラシック観連のサイトで評判のいいワシーリー・ペトレンコ。ポスト・ゲルギエフ世代の注目株である。1976年生まれだそうだから、実は筆者とあまり年が変わらない。ここのところ、こちらの期待と演奏の結果が反比例することが多かったので、ちょっと警戒しつつ会場に足を運んだのだが、期待通りの出来だった。いや、久々に期待以上のコンサートに出会った。イギリスを中心に人気急上昇中というのも、十分うなずける話である。
ただその演奏を言葉にしようとすると、躓いてしまう。驚くほど整理されて、メリハリのついた演奏ということは言えるけど。CDで聞くより、いろんな楽器がバランスよく聞こえてきてビックリ。16分音符のような細かい動きもちゃんと聞こえてくる。指揮も正確で分かりやすく、むやみやたらと熱く棒を振りまわすことはしない。かなり「楽譜に忠実」な演奏と言えるのではないか。
でもそれが冷たい演奏かというと、そんなことはなくて、むしろ音を聞いているうちにどんどんこちらが熱くなってしまう。第1楽章が終わった時点で、すっかり興奮している自分がいた。昔R.シュトラウスが、「指揮者は熱くなる必要はない。聴衆だけが熱狂すればいいのだ」みたいなことを言ったらしいけど、それを実行したのが今日の演奏かもしれない。若くしてマーラーの3番のような大作をここまで聞かせてしまう才能には、年が近いだけに嫉妬すらしてしまう。
どうしても一週間前に聞いたゲルギエフのマーラーと比較してしまうが、今日のペトレンコに比べれば、ゲルギエフは分が悪い。幾分きつい言い方をすれば、ゲルギエフは「上出来の凡演」とでも言うべきか。両者とも特別なことをしているわけではなく、オケの技量にも大きな差はないのに、このインパクトの違いはどこから来るのだろう?
あえて今日の演奏の課題を指摘すれば、第4楽章とか、もう少し神秘感が欲しかったということになる。でもそれは今後の楽しみということにしておきたい。勝手な空想だが、テミルカーノフの後任として、ペトレンコがフィルハーモニーの音楽監督にならないだろうか?彼ならムラヴィンスキー時代の栄光を取りもどしてくれそうな気もするのだが。
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