2010年1月29日金曜日

モーツァルト週間のクルターク~「カフカ断章」を聞く

  • ジョルジ・クルターク:カフカ断章

パトリシア・コパチンスカヤ(ヴァイオリン)、アンナ・マリア・パーマー(ソプラノ)

1月28日 モーツァルテウム大学 15:00~

モーツァルト週間は当然モーツァルトの音楽の特集であるが、モーツァルトのみならず、現代作曲家の作品も取りあげる。今年はクルタークの年らしい。ちなみに来年のプラグラムを見ると、ハインツ・ホリガーの作品が並んでいる(←聞きにいきたい…)。採算は合わないだろうが、こうした取り組みが長期的に見て、クラシック音楽の発展を支えているのだろうと思う。主催者の意図を汲むためにも、モーツァルト週間でクルタークの作品を聞いてみたかった。

もとより、そんな義務感だけで聞きにいったわけではなく、クルタークは昔「墓碑(Stele)~大オーケストラのための」という作品を耳にして以来、注目していた作曲家だったので、むしろ喜んで聞きにいったというのが実情。しかもヴァイオリンを担当するのが、自由奔放な「クロイツェル・ソナタ」で賛否両論を巻きおこしたパトリシア・コパチンスカヤ(でも私自身は未聴なんですが…)。これは行かない手はない。

案の定、一昨日、昨日のようには人が押しかけていない。300人しか入らない室内楽用(兼会議室?)の小さなホールにもかかわらず、あんまり席は埋まっていなかった。でも現代音楽のコンサートなら、オーストリアとはいえこんなものだろう。もちろん、作曲家ご自身の姿も拝めた。

「カフカ断章」はECMから出たCDを持っていたが、さすがに音だけで、しかもドイツ語がさっぱり理解できない人間には、1時間以上集中して聞くのは難しい。そういうわけで、パソコンにも取りこまずロシアに来てしまったのだが、よくあるパターンで、生で接するととても面白い。相変わらずドイツ語は全く理解できないのに。パーマーもコパチンスカヤも、顔を千変万化させる演奏=演技、まさしくperformance。昨日はなかったインスピレーションの働きかけが、今日はあった。

おそらくクルタークの楽譜は綿密に書きこまれているはずだが(なんでも、事細かに演奏者に向かって指示を出す人らしい)、2人の演奏はまるで即興演奏のよう。1時間以上、舞台の上に視線が釘付けだった。クルタークの作品には、叫ぶような声、かすれるような音など、ノイズが多く出てくるが、それらが「音楽」として昇華されている。これでテキストがロシア語なら、モスクワのライブ・ハウス「ドム」で演奏されてもおかしくない。ロシアで同じような空気に出会いたければ、クラシックよりもむしろ実験的なジャズのコンサートに行ったほうが確実である。

大いに満足して帰路についたが、演奏会直後に遭遇した思わぬエピソードについては、別稿を参照。

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