2010年6月4日金曜日

テミルカーノフのマーラー

  1. グスタフ・マーラー:亡き子をしのぶ歌
  2. 同上:交響曲第4番ト長調
ユーリ・テミルカーノフ指揮、サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団、トーマス・ハンプソン(バリトン)、イリーナ・マタエヴァ(ソプラノ)
6月4日 フィルハーモニー大ホール 19:00~


テミルカーノフを聞くのは、ペテルブルグに来てから2回目。最初に聞いたのは、ちょうど1年前だった。別に彼のことを嫌っているわけではなく、単純に接する機会がなかったのである。スケジュールが合わなかったり、有名なソリストと一緒にやるためにチケットが(こちらの感覚だと)バカみたいに高かったり。それにゲルギエフみたいに、しょっちゅうコンサートをやってくれるわけでもない。まあ、ゲルギエフの仕事量が多すぎるのだが。それでもテミルカーノフは人気があるのか、会場は立ち見も出るほどの超満員。

今回のコンサートのチケットも、決して安くはなかった。1番後ろの席で300ルーブル。目玉はもちろんトーマス・ハンプソンがマーラーを歌うということ。彼はもうすぐ55歳になるはずで、声のほうはどうかなと思っていたけど、声質自体には全く問題なし。ただ若いころからバーンスタインとウィーン・フィルをバックに歌ったりして、マーラーの歌曲に精通しているはずの割には、聞いていて今一つピンとこない。「そうか、マーラーはこういう風に歌うんだ!!」という目から鱗の感覚に襲われないのである。意外と淡白だなあというのが、正直な感想。

たぶん一つには、テミルカーノフ指揮のオーケストラが足を引っ張ったのではないかと思う。「亡き子をしのぶ歌」1曲目の冒頭、木管のアンサンブルがなんか変。旋律の受渡しが上手くいっていない。楽器のバランスも変。結局、オーケストラが曲に慣れていないのではないかという疑念は、最後まで払拭できなかった。

交響曲第4番も同様の傾向。部分的にはとても美しいのだけど(特に弦楽器が歌いだすと)、全体的にどこかアンバランスで、「天上」だとか「幸福」の雰囲気はあんまり出ていない。皮肉が効いているわけでもない。これだったら、ゲルギエフとマリインスキーの4番のほうがいい。

1月にワシーリー・ペトレンコの指揮で交響曲第3番を同じオケで聞いた時は、オケの個性が決してマーラーの音楽の妨げになっていなかったが、今回は違った。テミルカーノフが悪いのか、4番の特性なのかよく分からないが、とにかく今回もテミルカーノフの株は自分の中で上がらず。

2 件のコメント:

yusuke さんのコメント...

テミルカーノフのマーラーは、たぶん曲に慣れているかどうか関係なく、いつもそんな感じなのではないかという気もします。ペテルブルクで5番を聴きましたが、やはり全体的にバランスとか縦の線の揃い具合とか変でした。ただ第4楽章が非常に美しかったです。
マーラーのほかにもショスタコとかプロコとか、きっちり音符が詰まってる曲はどうも違和感があるのですが、肩の力抜けた映画音楽とかやると洒落ていて上手いです。あと、エルガーが良かったと知人から聴いたことがあるのですが、これも何となく納得。

sachison さんのコメント...

なるほど、そういう傾向が彼にはありましたか。
じゃあ来シーズンは何を振るのだろうと思って調べてみると、グリーグのピアノ協奏曲とムソルグスキーの「展覧会の絵」(11月10日)、ブラームスのピアノ協奏曲第1番と交響曲第4番(1月11日)、シューマンのチェロ協奏曲とドヴォルザークの「新世界より」(3月16日)。この中で期待するとすれば「新世界より」?