2010年6月25日金曜日

ロジェストヴェンスキーのシュニトケとブルックナー

  1. アルフレート・シュニトケ:ヴァイオリン協奏曲第4番
  2. アントン・ブルックナー:交響曲第2番ハ短調(1872年版)
ゲンナージ・ロジェストヴェンスキー指揮、サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団、アレクサンドル・ロジェストヴェンスキー(ヴァイオリン)
6月24日 フィルハーモニー大ホール 19:00~

お目当ては当然シュニトケ。ブルックナーは怖いもの見たさの心境だった。でも結果は、こちらの予想と全く逆だった。

シュニトケのヴァイオリン協奏曲第4番は、CD(クレーメル盤)を聞いている段階では気がつかなかったが、かなりオーケストレーションの薄い曲。編成自体はでかいのに、みんな待ち時間が多い。ティンパニ奏者など「ヒマ~」という表情でずっとひじをついていた。そのティンパニ奏者を見てしまったせいか、どうも緊張感が薄い気がした。ロジェストヴェンスキーなら、もっとシュニトケ特有の狂気を醸しだしてくれることを期待していたが。息子のソロは慣れた感じで弾けているものの、さすがにクレーメルあたりと比較するのは酷だろう。

それに、第2楽章と第4楽章にあるはずの「視覚的カデンツァ」で、何もせず。思わず笑いだしてしまうようなパフォーマンスを期待していたのに。

次はブルックナー。ロシアでは珍しく、ちゃんとどの版を使うかが書いてある。実は前日に、ロジェストヴェンスキーの公開記者会見みたいな場に行って話を聞いてきたのだが、その場で彼は「ブルックナーは実は23の交響曲を書いたのだ。私はそれを全部指揮した」と得意気に話していた。ソ連時代にブルックナーの交響曲全集を作った際、2番の1872年版の存在を知らなかったらしいのだが、5年前にある人からその存在を指摘されて、今回取りあげることにしたとのこと。ロジェストヴェンスキーは「もう新しいヴァージョンは出てこないだろう」と胸を張っていたが、さあどうだか。

ロジェストヴェンスキーがソ連時代に作ったブルックナーの交響曲全集を、実は私は全部持っている。それも国内盤で。札幌に住んでいたころ、近所のブックオフに7000円で丸ごと売りに出されているのを見て、思わず買ってしまった。予想通りの珍解釈のオンパレードだったけど、それなりに楽しませてもらった。特に4番の初稿とか、かなり気合が入っていたように思うし、4番のマーラー版というユニークなものも聞けた。

今回も、にやけながら聞くか、退屈のあまり寝てしまうかのどちらかと思っていたが、結果は全く違った。かなり「正統派」のブルックナー。相変わらず金管は堅い音だが、なぜか違和感を覚えない。むしろ金管の咆哮が快感なぐらい。さすがにロジェストヴェンスキーも、この20年の間にブルックナーに関する理解を深めたのか?特に第1楽章は立派。もしこのコンビが8番や9番を演奏したら、どういうことになっていただろう。

まさかロシアで、それもロジェストヴェンスキーの指揮で、ブルックナーを聞いて満足することになるとは思わなかった。W杯の日本チームといい、世の中予想外のことがいろいろと起きるものである。

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