2010年6月14日月曜日

ゲルギエフの「青ひげ」、再び

  • ベラ・バルトーク:歌劇「青ひげ公の城」
ワレリー・ゲルギエフ指揮、マリインスキー劇場管弦楽団、ウィラード・ホワイト(バス・バリトン)、エレーナ・ジドコワ(メゾ・ソプラノ)
6月14日 マリインスキー劇場 18:00~

世界はワールドカップに浮かれていて、本選出場を逃したロシアでもちゃんとテレビで中継している。もちろん日本‐カメルーン戦も見られるが、同じ時間帯にマリインスキーでやる「青ひげ」に興味があったので、サッカーの観戦は諦めた(帰ってきてネットでチェックしてみると、なんだかんだで日本勝っているじゃん)。

1年前にコンサートホールで聞いたゲルギエフの「青ひげ」は、この一年間に聞いたゲルギエフの演奏の中では、かなり上出来の部類に入るので、劇場のほうでやるとどうなるか興味があった。しかも歌手はLSO Liveから出ているCDと同じ組み合わせ。特にホワイトは、昨年末に「ファウストの劫罰」のメフィストフェレス役で聞いて、結構気に入った(あの時、オケは生気がなかったけど)。

今回、前口上はカット。いろいろと読み替えのできそうなホラーっぽい話だけど、それほど大きな読み替えはなくて、ホワイトがスーツを来ているとか、第五の扉で領地の代わりに7人ほど(だったけ?)の子どもが登場するとか(もしかして、領地の森や川などの要素を象徴しているとか?)いう以外は、割と筋書き通りの演出で、分かりやすい。7つの扉そのものは出てこないにしても、ユディトが目撃するものが、ちゃんと順を追って登場する。

ホワイトの歌唱は、「ファウストの劫罰」の時に比べると、やや硬いかなと思った。この人、ちょっとユーモアのセンスが求められる役のほうが、はまる気がする。そうはいっても、普段聞いているマリインスキーの歌手よりは明らかに上手い。ジドコワのほうは、十分役にはまっている。CDではどうなっているのだろう。

ゲルギエフ指揮のオケは、去年コンサートホールで聞いた時のほうがもっと洗練されていたように思う。ただしこれは、コンサートホールのほうがずっと音響がいいというのも、要因として大きいだろう。演奏の方向性としては不満なし。やっぱりこの人、響を整えることに関しては上手いのだ。ゲルギエフの心の中は冷めているのが分かるが、こういう曲の場合、突き放したアプローチを取ってもオーケストレイションが面白いので、十分楽しめる。

終演後、劇場前でバスを待っていたら、楽団員2人が楽器を担いで、いそいそとコンサートホールのほうへ向かっていくのが見えた。実はこの後20時から、コンサートホールのほうでウェーバー・プロ。もちろん指揮はゲルギエフ。よりによって、なんでウェーバー!?しかも前半で、「静かな森の乙女」とかいう、ものすごいマイナーな歌劇を抜粋で取りあげるし。普通なら「魔弾の射手」でしょう。そもそもロシアで、ウェーバーなんて一回も聞いたことがないのだけど。いつもながら、ここの楽団員は大変だなあと思う。さすがに私はパス。

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