2010年6月27日日曜日

懐かしの音楽

笑わせてもらいました。

2010年6月26日土曜日

「魅せられた旅人」をもう一度


  • ロディオン・シチェドリン:歌劇「魅せられた旅人」
ワレリー・ゲルギエフ指揮、マリインスキー劇場管弦楽団ほか
6月25日 マリンスキー・コンサートホール 20:00~

個人的にゲルギエフのベストパフォーマンスだった1月2日のシチェドリン。あれからCDも買って聞いてみたが、これはやっぱり力作だと思う。平明すぎず難解すぎず、個人的にちょうどいい塩梅の現代性を持っている。気になるので、もう一度見にいった(ペテルブルグで2回見たオペラが、まさかシチェドリンになるとは)。

印象は、前回とほとんど変わらないので、もう繰りかえさない。今回も、シチェドリンとプリセツカヤの夫妻が客席に姿を見せていた。だからなのか、ゲルギエフは手抜きをしていない。さすがに何度かCDでも聞いたので、前回ほどの衝撃はなかったものの、その代わり、大体の山場を把握することができた。こうなってくると、他の演出、演奏にも接したくなる。マゼールとニューヨーク・フィルの初演はどんな感じだったのだろうか。

とにかくこれは、現代ロシアを代表する作品だと思う。

(写真は、終演後の様子)

2010年6月25日金曜日

ロジェストヴェンスキーのシュニトケとブルックナー

  1. アルフレート・シュニトケ:ヴァイオリン協奏曲第4番
  2. アントン・ブルックナー:交響曲第2番ハ短調(1872年版)
ゲンナージ・ロジェストヴェンスキー指揮、サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団、アレクサンドル・ロジェストヴェンスキー(ヴァイオリン)
6月24日 フィルハーモニー大ホール 19:00~

お目当ては当然シュニトケ。ブルックナーは怖いもの見たさの心境だった。でも結果は、こちらの予想と全く逆だった。

シュニトケのヴァイオリン協奏曲第4番は、CD(クレーメル盤)を聞いている段階では気がつかなかったが、かなりオーケストレーションの薄い曲。編成自体はでかいのに、みんな待ち時間が多い。ティンパニ奏者など「ヒマ~」という表情でずっとひじをついていた。そのティンパニ奏者を見てしまったせいか、どうも緊張感が薄い気がした。ロジェストヴェンスキーなら、もっとシュニトケ特有の狂気を醸しだしてくれることを期待していたが。息子のソロは慣れた感じで弾けているものの、さすがにクレーメルあたりと比較するのは酷だろう。

それに、第2楽章と第4楽章にあるはずの「視覚的カデンツァ」で、何もせず。思わず笑いだしてしまうようなパフォーマンスを期待していたのに。

次はブルックナー。ロシアでは珍しく、ちゃんとどの版を使うかが書いてある。実は前日に、ロジェストヴェンスキーの公開記者会見みたいな場に行って話を聞いてきたのだが、その場で彼は「ブルックナーは実は23の交響曲を書いたのだ。私はそれを全部指揮した」と得意気に話していた。ソ連時代にブルックナーの交響曲全集を作った際、2番の1872年版の存在を知らなかったらしいのだが、5年前にある人からその存在を指摘されて、今回取りあげることにしたとのこと。ロジェストヴェンスキーは「もう新しいヴァージョンは出てこないだろう」と胸を張っていたが、さあどうだか。

ロジェストヴェンスキーがソ連時代に作ったブルックナーの交響曲全集を、実は私は全部持っている。それも国内盤で。札幌に住んでいたころ、近所のブックオフに7000円で丸ごと売りに出されているのを見て、思わず買ってしまった。予想通りの珍解釈のオンパレードだったけど、それなりに楽しませてもらった。特に4番の初稿とか、かなり気合が入っていたように思うし、4番のマーラー版というユニークなものも聞けた。

今回も、にやけながら聞くか、退屈のあまり寝てしまうかのどちらかと思っていたが、結果は全く違った。かなり「正統派」のブルックナー。相変わらず金管は堅い音だが、なぜか違和感を覚えない。むしろ金管の咆哮が快感なぐらい。さすがにロジェストヴェンスキーも、この20年の間にブルックナーに関する理解を深めたのか?特に第1楽章は立派。もしこのコンビが8番や9番を演奏したら、どういうことになっていただろう。

まさかロシアで、それもロジェストヴェンスキーの指揮で、ブルックナーを聞いて満足することになるとは思わなかった。W杯の日本チームといい、世の中予想外のことがいろいろと起きるものである。

2010年6月22日火曜日

クラヲタに100の質問(いろいろ編)

Q82. お宅のオーディオ環境を教えてください。
海外在住のためパソコンで聞いています。ただしスピーカー(ソニーのSRS-M50)をつけて、オーディオマネージャをいじくれば、そこそこいい音は出ます。

Q83. CD以外の音楽メディアとしては何をお持ちですか?
最近、LPも収集中。もちろんiPod は利用。

Q84. CD・LP、楽譜、楽器以外に集めている音楽関連グッズって何かあります?
なし。

Q85. ではここで一つ持ち物自慢をどうぞ!(誰それのサインを持ってるとか、幻のレコードを持ってるとか)
強いて挙げれば、以下の通り。
・近衛秀麿によるマーラーの交響曲第4番、世界初録音のデンオン盤。
・ロジェストヴェンスキーのブルックナー交響曲全集を国内盤ですべて。
・フルトヴェングラーが指揮したシューベルトのグレート、メロディアのLP。
・サヴァリッシュ&シュターツカペレ・ドレスデンによるシューマンの交響曲第3番「ライン」、エテルナのLP(黒盤)。
・ショスタコーヴィチの交響曲第13番の自筆譜ファクシミリ。その他、DSCH 社から出ているショスタコーヴィチの楽譜を買いまくっています(ただし全部そろえる気はなし)。
・チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」の自筆スケッチのファクシミリ。
(上2つは札幌のブックオフで、下4つはペテルブルグで購入)

Q86. 通勤通学時もクラシック聞いてます?
そういう時は、基本的に音楽を聞きません。

Q87. クラシックのMIDIについてどう思われますか?
いいんじゃないでしょうか。

Q88. あなたの知っているクラシック替え歌を教えてください。
学生オケにいたころ、ベートーヴェンの交響曲第9番の第2楽章、同じリズムがひたすら続くところで、「パンプキン、パンプキン、食べて、食べて」と口ずさむように、トレーナーの先生に言われたことがあります。

Q89. あなたの印象に残っている音楽マンガ・小説・映画を教えてください。
松本清張の「砂の器」。実験工房や黛敏郎が華々しく活躍していたころを、見事に活写しています。

Q90. 突然ですが、日本人であるあなたが西洋の伝統音楽であるクラシック音楽を聴くということに、何か疑問を感じたことはありますか?

時々感じる。でもそれについて論じ出すと、論文ができる。

Q91. 学生時代(小中高大)の音楽の授業で印象に残っている出来事を教えてください。
中学の音楽の授業で、一見音楽とは全く縁のなさそうなスポーツマンタイプの同級生が、とても見事なピアノを披露してくれたこと。

Q92. では学校時代の音楽の成績、良かったですか?正直にお答えキボンヌ。

あまり良くなかったような。でもはっきり覚えていません。

Q93. クラヲタなのにやってしまったこっ恥ずかしいエピソード、あったらここでカミングアウトしてください。
この一連の質問に答える過程で、何かやっているかも。

Q94. それではクラヲタでよかったと思った体験はありますか?

なし。

Q95. 逆に最もひどかった体験は?
それもなし。オケや楽器にまつわるいやな思い出は山のようにありますが。

Q96. 尊敬するクラヲタいたらどんな人か教えてください。
いないです。

Q97. 音楽がなくても生きていけますか、或いはその自信がありますか。
考えたことありません。

Q98. 奥様(彼女)/旦那様(彼氏)から「あたしとクラシック音楽と、どっちがだいじなのっ!」と迫られたら、なんと答えますか?
「君」といいつつ目が泳いでしまうでしょうから、ばれるでしょう。

Q99. ズバリあなたにとってクラシック音楽とは何ですか?
生きている証。

Q100. お疲れさまでした。最後に一言物申してください。

オタクって恐ろしい。

改めて回答を読みなしてみると、自分の偏食ぶりがよくわかった。普段はドイツ3Bとかもよく聞くのだけど、バッハもブラームスも出てこないとは。

クラヲタに100の質問(音楽家編)

Q70. あなたのおすすめの演奏家(含む歌手)を教えてください。
パトリチア・コパチンスカヤ!!
指揮者ではワシーリー・ペトレンコ。

Q71. 世界一のオーケストラは、ずばりどこ?
総合点でベルリン・フィルかな。

Q72. 日本のオーケストラに何か物申すことあります?(一般的にでも、個別のオケに対してでも可)
「物申す」というほどのものはありません。ロシアに来てから、日本のオーケストラって実は結構優秀だと思うようになりました。

Q73. N響の次期音楽監督は誰になってほしいですか?
デュトワに戻ってきてもらう(団員は嫌がるだろうけど)。

Q74. あの世から一日だけ生き返ってくれる音楽家がいたら、誰に生き返ってほしい?
ショスタコーヴィチ。『証言』の感想を聞きたい。

Q75. 競演してみたい演奏家を教えてください。
これもコパチンスカヤ。

Q76. 弟子に入ってみたい音楽家を教えてください。
いません。弟子入りした途端に、みんな鬼になりそうで怖い。でもバーンスタインに「音楽学」を教わるのはいいかも。

Q77. あなたの知っている音楽家の笑い話を教えてください。また聞きでも可。
岩城宏之が指揮棒と間違えてヘアブラシを持って舞台に出ていこうとしたら、舞台袖でマネージャーにひったくられたとか。この方、本当に正直に書く人でしたね。

Q78. あなたの知り合いに音楽を職業にしているプロの方はいますか?(名前はあげなくていいです)
ブログに何回か書いていますが、います。

Q79. 音楽の教科書にのっている音楽家の肖像画に落書きしたことありますか?
国語の教科書にはありますが、音楽の教科書にはありません。

Q80. J・S・バッハに何人子供がいたか知ってます?
20人?

Q81. ブラインドテストで演奏家の違いを聞き分けることが出来(ると思い)ますか?
グールドぐらいなら分かるかな。あるいはメンゲルベルクとか。

クラヲタに100の質問(楽器編)

Q59. 楽器演奏できますか?できる方は楽器の種類と演奏歴を教えてください。出来ない人、てゆーか楽譜読めますか?
チェロ。大学に入ってから、学生オケに参加して始めました。ただし一度中断しているので、いまだにど下手くそです。

Q60. やってみたい楽器を教えてください。
ピアノ

Q61. 楽器ができる方が音楽をわかっていると言えると思いますか?
さあ、どうだか。

Q62. 楽器レッスンでの先生・師匠の思い出を語って下さい。学校の音楽の先生の思い出でもOK。
チェロを始めたとき、プロの先生から散々しごかれました。私の練習の仕方が中途半端だったので、チェロのほうはそれほど上達しませんでしたが、彼女の教えはむしろ日常生活の中に活きることになったように思います。

Q63. 合奏でやりたいパートを挙げてください。
ティンパニ。

Q64. ピアノ曲で弾いてみたい曲を教えてください。
カプースチンのピアノ曲。8つの演奏会用練習曲など。

Q65. オーケストラの一員とソリスト、どっちで舞台に上がりたいですか?
オーケストラの一員。あがり症なので、ソリストは絶対に無理。

Q66. どうしても好きになれない楽器があったら教えて下さい、またその理由も教えてください。
なし。

Q67. 右手で3拍子、左手で4拍子、振り分けること出来ますか?
できない。昔から音痴であり、リズム音痴。

Q68. あなたの知っている楽器メーカーを挙げてください(国産、外国メーカーなんでもあり)
ヤマハ、スズキ、スタインウェイ、ベーゼンドルファー。

Q69. バッハのBWV1013番の曲で使われている楽器は?
知りません。

クラヲタに100の質問(コンサート編)

Q47. 月に何回くらいコンサート(オペラ)に行きますか?場所、ジャンルは?
日本では月一以下。ロシアでは、このブログを見れば一目瞭然。

Q48. お薦めのホールと座席を教えてください。
マリインスキーのコンサートホールはとてもいい響のするホールです。でも観光で来るのなら、マリインスキー劇場やフィルハーモニーのような古い建物に行ったほうが、ペテルブルグに来たという雰囲気は味わえると思います。

Q49. オーケストラの定期会員になってますか?または定期的に聴きに行くオケはありますか?どこのオケか、どれくらいの期間聴いているのか教えてください。
マリインスキー劇場のオケ、この1年間聞きまくり。札幌にいたころは札幌交響楽団。

Q50. 忘れられないコンサート(オペラ)ってありますか?あれば一つ二つ挙げてください。
ロシアで聞いたコンサートについてはこのブログに書いているので、日本で聞いたコンサートについて一つ。2008年の12月に札幌のキタラで聞いた、ロジェ・ミュラロ(ムラロ)によるメシアンの「幼子イエスに注ぐ20の眼差し」全曲は、自分の中にあったピアノの概念を根本から覆すほど鮮烈な体験でした。

Q51. 一回のコンサート(オペラ)に最高いくらまで出したことありますか?
詳しくは覚えていないけど2万円には達していないはず。そもそも1万円以上のチケットを買うことも滅多にない。

Q52. コンサート会場に何か物申すことあります?(一般的にでも、個別のホールに対してでも可)
なし。

Q53. では新国について、どう思いますか?
関東に住んだことないので、よく分かりません。オペラも苦手だし。

Q54. 会場でマナーの悪い人に遭遇したことありますか?こいつは生かしておけん!というのがいたら教えてください。
ロシア人のマナーの悪さに比べたら、日本人なんて大人しいものですよ。ロシアの聴衆は楽章間で盛大に拍手する、平気で携帯を鳴らしまくる。見方を変えれば、気軽に音楽を楽しんでいるともいえるのですが。

Q55. 演奏会にはどのようなファッションで行きますか?愛用ブランドとかあったら教えてください。
普段着。

Q56. 某オーケストラの事務局で働いているあなたは、来シーズン以下のようなビッグネーム指揮者を呼ぶことに成功しました。マエストロ達は次のような曲が振りた いと言っていますが、どれも意外な選曲で主催者としては困ってしまいました。   どれか1つしか認められないとすれば、どれを選びますか?それは 何故?
1、 リッカルド・ムーティが、シベリウス/交響曲第4番
  
2、 ゲンナジ・ロジェストヴェンスキーが、ワーグナー/ワルキューレ第一幕(演奏会形式)
  
3、 クリスティアン・ティーレマンが、ラヴェル/ダフニスとクロエ
  
4、 ニコラウス・アーノンクールが、ラフマニノフ/交響曲第2番
  
5、 マイケル・ティルソン・トーマスが、バッハ/マタイ受難曲

1.ムーティのシベリウス。ムーティは時々、全く予想外の名演をするので。

Q57. 外国でコンサート(オペラ)聴きにいったことはありますか?あれば少し聞かせてください。
今、外国に住んでいます(笑)。

Q58. コンサート帰りに寄れるような会場周辺のお薦め飲食店を教えてください。
日本でもロシアでも悩みの種です。

クラヲタに100の質問(CD編)

Q29. さて、CD(LP)何枚持ってますか?
1500枚以上は確実。

Q30. そのなかからお気に入りベスト3を挙げてください。
出来るだけ有名どころを避けてみます。
1.ボールト指揮ロンドン・フィルによるマーチ集(ソニー)
2.メッツマッハーとハンブルク国立フィルによるWho is afraid of 20th century music?のシリーズ(EMIと自主製作)
3.Sound of Sund (オルフェイ・ドレンガルによる合唱曲集)(BIS)
次点で、ネシュリング指揮サンパウロ交響楽団によるベートーヴェンの交響曲第5番と7番(Biscoito Classico)。あと、シッパーズ指揮コロンビア交響楽団のオペラ序曲集(ソニー)も。

Q31. 一番沢山の同曲異演盤を持っている曲と、その枚数を教えてください。
何だろう?ラヴェルの「ボレロ」「ラ・ヴァルス」、ショスタコーヴィチの交響曲第4番、5番あたりは10枚以上持っていることは確実ですが。

Q32. 月に何枚くらいCD買いますか?どんなジャンルが多いですか?
ロシアに来てからは、3枚ぐらいでしょうか。日本にいたころは、ボックスセットのせいで不明です。基本的に近代のオケもの。

Q33. 買って本当に後悔した糞CDは何ですか?
ある程度の当たり外れは覚悟の上なので、後悔しません。

Q34. あなたが持っている名珍盤を教えてください。
ロジェストヴェンスキーのブルックナー交響曲全集かな。珍演ですが、日本盤は解説が充実していることもあり、手放しがたいです。

Q35. 最近買って当りだったCDは何ですか?
ウィーンで買ったプレートル指揮ウィーン・フィルのシェーンブルン宮殿コンサート2008(デッカ。ただしオーストリアのローカル盤)。これは素晴らしいです。特にラヴェルのラ・ヴァルスが絶品。野外での収録の割には音もいいし。

Q36. 懐に優しいメジャー廉価盤・ナクソスのお薦めを挙げてください
日本作曲家選輯のシリーズ。

Q37. 日本のレーベルから出して欲しい曲を教えてください。
細川俊夫の「リアの物語」。でも売れないか…。

Q38, CD復刻・再発して欲しい名演奏を挙げてください。
1.上記のボールトによる、マーチ集。
2.T. トーマスによるバーンスタインの「オン・ザ・タウン」(グラモフォン)。
3.チョン・ミョンフンによるショスタコーヴィチの交響曲第14番(レーベルは失念)。

Q39. 実在しないけど、こんな演奏者によるこんな曲目のCDあったらなあ、というのを挙げてください。
1.ゲルギエフの指揮で、黛敏郎の涅槃交響曲。
2.T. トーマスの指揮で、バーンスタインの「ウェスト・サイド・ストーリー」(全曲)
3. ブーレーズの指揮で、メシアンのトゥランガリラ交響曲(若いころの暴言は水に流して)

Q40. 人生で初めて買ったクラシックCD、LPは何でした?それって、まだ持ってます?
カラヤン指揮ベルリン・フィルのシベリウス管弦楽曲集(80年代、デジタル録音盤)。まだ持ってます。

Q41. どこでCDを購入する事が多いですか?行きつけのショップはありますか?
大体どの街に住んでも、行きつけの店を作っています。日本時代はネットもよく利用。

Q42. クラシック売場で、変な人見かけたりしたことありませんか?
なし。

Q43. ヤフーオークションでCD(楽器も可)購入したことあります?
なし。

Q44. CD聴きながら何してますか?
仕事、読書、昼寝。たまに楽譜を(漠然と)眺めている。

Q45. 図書館などでクラシックCDを借りることはありますか?
大阪の豊中市に住んでいたときは、近所に便利な図書館があって、そこでよくCDを借りていました。

Q46. 通販でクラシックCD全集買ったことありますか?
なし。

クラヲタに100の質問(曲目編)

Q13. 「食わず嫌い選手権~クラシックヴァージョン~」が開催されます。大好きな曲4つと実は苦手な曲1つを教えてください。
【大好きな曲】
1.ストラヴィンスキー:春の祭典
2.バルトーク:中国の不思議な役人
3.三善晃:響紋
4.ベルク:ヴォツェック
【苦手な曲】
プッチーニ:蝶々夫人(イタリアオペラはすべて食わず嫌い。ただしモンテヴェルディの「ポッペアの戴冠」は除く)

Q14. お薦めの知られざる名曲ありませんか?
ヴェレシュ:パウル・クレーへのオマージュ、シュニトケ:ヴァイオリン協奏曲第1番、レーガー:ある悲劇への前奏曲、オルフ:アフロディーテの勝利、シチェドリン:魅せられた旅人、ポポフ:交響曲第3番、ペンデレツキ:ウートレニャ(朝拝)など

クラシックかどうかは微妙ですが、Der Kastanienball (the Chestnut Ball) "The Fall of Lucrezia Borgia"は、いつか「クラシック(古典)」として認識されてほしい作品。音楽監督はフランスのジャズ・ギタリスト、ノエル・アクショテ。他に、安田芙充央(ピアノ)、エルンスト・レイスグル(チェロ)などが参加。バッハ、ワーグナーからオーバー・ザ・レインボーまで、いろんな音楽を引用しながら、ジャンル不詳の不思議な世界が繰りひろげられます。いかにもWinter & Winter的なユニークな舞台作品。

Q15. あなたの知っている変なタイトルの曲を教えてください。
ジョリヴェの作品に「パチンコ」というのがあるとか。

Q16. 日本が世界に誇る名曲は何?
黛敏郎の涅槃交響曲と武満徹のノヴェンバー・ステップスは別格としても、湯浅譲二のクロノプラクティスⅠ、西村朗の2台のピアノと管弦楽のためのヘテロフォニー等々、たくさんあると思います。

Q17. 自分が死んだ時の葬式で流してほしい曲を教えてください。
悲劇的な死に方をしたら三善晃の響紋。そうでなければお任せ。

Q18. メンデルスゾーン『無言歌集』全48曲の中から3曲選んでください。
すみません、この曲全然知らない。

Q19. クラシックビギナーの彼(彼女)ができました。最初に聞かせたい曲、CDは何?
CDではなく、まずYouTubeあたりでC. クライバーとバーンスタインの指揮姿を見せる。

Q20. クラシック音楽が使われて印象的だったTVCMとその曲名を教えてください。
アリナミンEXのCMで、マーラーの交響曲第6番の冒頭が使われていませんでしたっけ?

Q21. 地図にも載らぬ小さな公国から御前演奏の依頼がありました、何の楽器で何の曲を演奏しますか?
琵琶で平家物語。

Q22. 春夏秋冬、あなた的な感覚でそれぞれの季節にふさわしい選曲をお願いします。
ヴィヴァルディの「四季」を一曲ずつ。
でも、もうちょっと頭をひねってみると、
<春> モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲
<夏> ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
<秋> メンデルスゾーン:交響曲第3番「スコットランド」
<冬> シベリウス:ヴァイオリン協奏曲
選んでみると、結構スタンダード路線だなあ。

Q23. あなたが朝の目覚めに聴きたいと思うクラシックの曲を教えてください。
目覚めはただの電子音のほうがいい。

Q24. あなたの知っているオペラの歌詞の一部を書いてください。
「しかして、その口に虚偽なかりき…」(「ヴォツェック」第3幕冒頭)

Q25. 三行程度でオペラのアリア(歌詞)を作ってみてください。
アリアは基本的に苦手。できない。

Q26. 自分のリサイタル・コンサートが開けることになりました。プログラムを作ってください。
前半、ロシアのアヴァンギャルドなジャズ・ミュージシャンを連れて来て、ハチャメチャな即興演奏をしてもらう。後半でシュニトケの交響曲第1番。

Q27. オペラで演じてみたい演目や役柄を教えてください。
「ヴォツェック」の大尉か医師になって、下品な根性を丸出しにする。

Q28. 最近どうしても耳から離れない曲って、何?
なし。

クラヲタに100の質問(プロフィール編)

遅ればせながら、今ごろ質問に答えます。

Q1. まずHN、職業と生息地を述べてください。
学生(に毛の生えたようなもの)、現在ロシアのペテルブルグ在住。

Q2. クラヲタ歴何年ですか?
20年弱。

Q3. クラヲタになったきっかけは?
母が時々クラシックを家でかけていたというのもあるでしょうが、決定的だったのは、中1の時に聞いた「ボレロ」。ジョルジュ・プレートル指揮、ベルリン・フィルによるヴァルトビューネの野外コンサートの映像を見たことがきっかけでした。

Q4. よく聴くジャンルはどのあたりですか?
以下の回答で明らかですが、近代管弦楽曲。

Q5. クラシック以外にどんな音楽を聴きますか?
ジャズ。特に好きなアーティストはユリ・ケイン、クリストフ・コメダ(Krzysztof Komeda、ポーランドのジャズ・ピアニスト。故人)、ウラジーミル・ヴォルコフ(ロシアのジャズ・ベーシスト)。マニアックなところに惹かれるのは、クラシックと同じ。

Q6. クラヲタであることは恥ずかしいですか?友人同僚にカミングアウトしてます?
カミングアウトする前にばれていることがほとんどです。

Q7. 最近はやりのライトクラシック系(ボチェッリやimage、Jクラ系など)をどう思う?
いいんじゃないでしょうか、別に(あまり深く考えていない)。

Q8. U野コーホー師についてどう思う?(知らない人はパスして下さい)
私は割と好きです。表現の仕方が特徴的なので毀誉褒貶の激しい人ですが、よく読むと、案外常識的なことを書いていることも多いと思います。

Q9. 携帯の着メロは何ですか?
ただの電子音。

Q10. クラシック音楽の雑誌を読んでいますか(有料無料不問)?よく読むものを挙げてください。
かつては『レコ芸』を読んでいましたが、日本を去る1年前ぐらいに、忙しくなったことをきっかけに買うのをやめました。

Q11. クラシック音楽関連の情報を主にどこから入手しますか?
インターネット。

Q12. あなたはCDリスナー派?コンサートゴーアー派?
日本ではCD派。ロシアではコンサート派。

2010年6月20日日曜日

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今まで同じようなことを何べんも聞かされてきたはずなのに、心に響いた。

2010年6月16日水曜日

ドゥダメル&シモン・ボリバル・ユースO in St. Petersburg

  1. イノセンテ・カレーニョ:マルガリテーニャ (交響的変奏曲)
  2. アルベルト・ヒナステラ:バレエ「エスタンシア」から舞曲 作品8
  3. ピョートル・チャイコフスキー:交響曲第4番ヘ短調 作品36
グスターボ・ドゥダメル指揮、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ
6月15日 マリインスキー・コンサートホール 20:00~


近年最も注目を浴びている指揮者、グスターボ・ドゥダメルと彼の手兵、SMYOV のペテルブルグ公演。この前に、モスクワでも演奏している。

実を言うと、ドゥダメルについては半信半疑だった。ラトル、アバド、バレンボイムという名だたる指揮者が彼のことを絶賛する割には、今一つ彼の演奏を聞いてピンとこなかったのである。具体的にはラジオで、デビュー盤であるベートーヴェンと、もう一つ「フィエスタ」というCDから数曲を耳にした程度なのだが、評判の割には、それほどいいとは思わなかった。特に「フィエスタ」に関しては、いかにも「ラテンの血」的なノリを聞かせてくれるかと思ったら、予想に反して意外と冷静な演奏だったような記憶がある。でも生で聞いたら感動するかもしれない。そのように期待半分、不安半分だった。

聞いた結果は「とても良かった」。これなら、なるほど、名だたる指揮者が誉めるのも分かる気がする。でもその魅力を言葉で伝えようとすると、なかなかいい表現が見つからず、困ってしまう。確かに若者らしい、元気のいい演奏なのだが、それだけではない。「ラテン」だとか「若さ」という言葉だけで片付けてしまうのはもったいないし、ラトルらが絶賛するのも、それだけではないからだろう。

私がふと思い出したのは、日本の高校における吹奏楽。中でも淀川工業高校とか天理とか、「お前ら本当に高校生か!!」と叫びたくなるような、高水準の演奏を聞かせてくれる学校がある。あの雰囲気に似ていないだろうか。いわばベネズエラの淀工吹奏楽部?

オーケストラは、率直に言ってそれほど上手いわけではない。グスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラとかPMFのオケのような、名だたる一流オケに引けを取らないようなユース・オケとは違って、奏者一人一人の技量はそれほど大したことないのは、ソロを聞けば明らか。また弦楽器については、楽器の構え方や弓の使い方を見ていれば、大体見当がつく。でもだからと言って、、ソロに危なっかさしさは感じない。つまり、マリインスキーのようにワンフレーズ吹いただけで「うわ、上手 い!」と感嘆させるほどではないのだが、ちゃんと聞けるレベルには十分達している。

オケはかなりの大編成。チャイコフスキーで、チューバを除き完全な倍管。トランペット4はまだしも、ホルン8、トロンボーン6というのには驚いた。弦楽器もチェロだけで16人。普通、ここまで奏者を増やしてしまうと、誰かが足を引っ張って音が濁ってしまうのだが、トゥッティの部分でもとても見通しがいい。いろんなパートの音が聞こえてくる。ベルリン・フィルのような名手の集団ではないはずなのに。

思ったのは、ドゥダメルという指揮者、とにかく耳がいいということ。楽器間のバランスを取るのはものすごく上手いし、細かいフレーズもちゃんと弾かせている。特にラテンものの2曲で顕著なのだが、バティスのようにいかにも「ラテンのノリ」という演奏ではなく、むしろ色彩豊かな近代オーケストラの名曲として聞かせてくれる。これは前述のように、「フィエスタ」でも感じていたこと。

この「プロ未満、アマ以上」の技量、どこか「青い」のだけど、でも元気のいい演奏、それでいて洗練された響というのは、私には毎年普門館に来て金賞を持って帰る、恐ろしく上手い高校の吹奏楽部を想起させる。アンコールは彼らの十八番、「ウェストサイド・ストーリー」の「マンボ」と、再びヒナステラの「エスタンシア」より「マランボ」だったが、ここで見せてくれたスタンドプレイも吹奏楽ではそれほど珍しいものではない。

理屈はどうであれ、会場はもちろん熱狂して、最後はスタンディング・オベーション。先日のソウル・フィルの時の観客の拍手もすごかったけど、今日のはさらにその上を行く。わずか5日の間に、2つのオーケストラを通じて、世界の広さとクラシック音楽の普及ぶりを実感した。

<追記>
ベネズエラからの来たと思しきスタッフたちが、会場のあちこちでカメラを回していた。DVDでも作るの?休憩時間、そのうちの一人の女性がなにか珍しいものでも写すようにして、客席にレンズを向けて写真を一生懸命取っているので、何だろうと思って見てみると、何とスーツを着たゲルギエフが客席で老人と話している。スーツ姿のゲルギエフなんて初めて見た。相手の老人は誰だかわからないけど、どうもゲルギエフは、ホールの説明をしているらしい。確かにこのホール、いい音がするものなあ。先日のソウル・フィルのティンパニ奏者も素晴らしいホールだと言っていたし、チョン・ミョンフンもアンコールの前に、「素晴らしいホールだ」と言っていた。

帰宅後、もしやと思って調べてみると、あの老人はやっぱりこのオケの生みの親、ホセ・アントニオ・アブレウだった。それでゲルギエフはあんなにかしこまっていたのか。

2010年6月14日月曜日

ゲルギエフの「青ひげ」、再び

  • ベラ・バルトーク:歌劇「青ひげ公の城」
ワレリー・ゲルギエフ指揮、マリインスキー劇場管弦楽団、ウィラード・ホワイト(バス・バリトン)、エレーナ・ジドコワ(メゾ・ソプラノ)
6月14日 マリインスキー劇場 18:00~

世界はワールドカップに浮かれていて、本選出場を逃したロシアでもちゃんとテレビで中継している。もちろん日本‐カメルーン戦も見られるが、同じ時間帯にマリインスキーでやる「青ひげ」に興味があったので、サッカーの観戦は諦めた(帰ってきてネットでチェックしてみると、なんだかんだで日本勝っているじゃん)。

1年前にコンサートホールで聞いたゲルギエフの「青ひげ」は、この一年間に聞いたゲルギエフの演奏の中では、かなり上出来の部類に入るので、劇場のほうでやるとどうなるか興味があった。しかも歌手はLSO Liveから出ているCDと同じ組み合わせ。特にホワイトは、昨年末に「ファウストの劫罰」のメフィストフェレス役で聞いて、結構気に入った(あの時、オケは生気がなかったけど)。

今回、前口上はカット。いろいろと読み替えのできそうなホラーっぽい話だけど、それほど大きな読み替えはなくて、ホワイトがスーツを来ているとか、第五の扉で領地の代わりに7人ほど(だったけ?)の子どもが登場するとか(もしかして、領地の森や川などの要素を象徴しているとか?)いう以外は、割と筋書き通りの演出で、分かりやすい。7つの扉そのものは出てこないにしても、ユディトが目撃するものが、ちゃんと順を追って登場する。

ホワイトの歌唱は、「ファウストの劫罰」の時に比べると、やや硬いかなと思った。この人、ちょっとユーモアのセンスが求められる役のほうが、はまる気がする。そうはいっても、普段聞いているマリインスキーの歌手よりは明らかに上手い。ジドコワのほうは、十分役にはまっている。CDではどうなっているのだろう。

ゲルギエフ指揮のオケは、去年コンサートホールで聞いた時のほうがもっと洗練されていたように思う。ただしこれは、コンサートホールのほうがずっと音響がいいというのも、要因として大きいだろう。演奏の方向性としては不満なし。やっぱりこの人、響を整えることに関しては上手いのだ。ゲルギエフの心の中は冷めているのが分かるが、こういう曲の場合、突き放したアプローチを取ってもオーケストレイションが面白いので、十分楽しめる。

終演後、劇場前でバスを待っていたら、楽団員2人が楽器を担いで、いそいそとコンサートホールのほうへ向かっていくのが見えた。実はこの後20時から、コンサートホールのほうでウェーバー・プロ。もちろん指揮はゲルギエフ。よりによって、なんでウェーバー!?しかも前半で、「静かな森の乙女」とかいう、ものすごいマイナーな歌劇を抜粋で取りあげるし。普通なら「魔弾の射手」でしょう。そもそもロシアで、ウェーバーなんて一回も聞いたことがないのだけど。いつもながら、ここの楽団員は大変だなあと思う。さすがに私はパス。

2010年6月11日金曜日

音楽と社会~ソウル・フィルのコンサート

  1. オリヴィエ・メシアン:忘れられた捧げもの
  2. チン・ウンスク:ヴァイオリン協奏曲
  3. クロード・ドビュッシー:海
  4. モーリス・ラヴェル:ラ・ヴァルス
チョン・ミョンフン指揮、ソウル・フィルハーモニー管弦楽団(ソウル市立交響楽団)、ヴィヴィアン・ハーグナー(ヴァイオリン)
6月11日 マリインスキーコンサートホール 20:00~


昨日、ネフスキーにある行きつけの楽譜屋に寄ってみると、何やら英語でショスタコーヴィチの楽譜を買い求めている2人組がいる。会話の内容からプロの音楽家だと思われたので、ちょっと声をかけてみると、ソウル・フィルのティンパニ奏者とホルン奏者だという。でも2人ともチェコ出身。へえ、ソウル・フィルも国際化しているんだ。明日聞きにいきますよ、と言って、その場は別れた。

さて当日、会場に着いてまずビックリしたのが、ホールの中が韓国人だらけだったこと。ペテルブルグにこんなにたくさんの韓国人が住んでいたの!?、というぐらい。しかもほとんどの人は、おそらく普段はマリインスキーに来ない人たちで、何やら観光客のように写真を取っている。子どもも多い。結局、聴衆の半分は韓国人だったのではないだろうか(誇張ではなく)。特にStall(中央の席)は、3分の2がおそらく韓国人。

しかも普段は、簡単な曲目解説と奏者のプロフィールが載ったプログラムを30ルーブルで売っているのだが、この日は無料で配布。しかもカラーでいつもより立派。ただし、しっかりヒュンダイ自動車の広告が載っている。それもそのはず、ヒュンダイがツアーのスポンサーなのだから。

今日のソウル・フィルのコンサートは、5月の末からイタリア、ドイツ、チェコと回ってきたツアーの最終日。モスクワでもやっている。どうやらこのツアー、単なる一オーケストラのコンサート旅行ではなくて、韓国社会が総力挙げて応援すべき、一大イベントのようだ。もちろん、韓国のテレビカメラも同行している。ゲルギエフのある種のコンサートとか、ウィーン・フィルのコンサートとか、音楽と社会、あるいは政治とのかかわりを否応なしに実感させられることが今までもあったが、この日もそう。こんなところで、韓国社会の一側面を目の当たりにするとは思わなかった。

そんなことを考えていると奏者が入ってきたのだが、これまたビックリ。西洋人が多い。弦楽器は韓国人、それも女性が多いが、金管は半分以上が西洋人。最初のメシアンなんて、トランペット奏者が3人とも西洋人だった。これもチョン・ミョンフンの戦略か。

では、そのオーケストラからどんな音が出るかというと、さすがに韓国社会の強力なバックアップを受け、世界的な指揮者が率いているだけのことはある。メシアンの冒頭、弦楽器が鳴った瞬間、お、と思った。もしかしてマリインスキーのオケより上手くない!?聞いているうちに、それは確信に変わった。明らかに、マリインスキーの弦より、音に厚みがある。ソロは確かに、マリインスキーのオケのほうが上手いかもしれないが、オケとしてのまとまりはソウル・フィルのほうが数段上。金管に外国人を多く起用していることもあり、パワーも十分。

以前、チョン・ミョンフンが合併した東フィルのスペシャル・アーティスティック・アドヴァイザーを引き受けたとき、「なんでそんなのを引き受けたのだろう」と疑問に思っていたが、FMで聞いていると東フィルのレベルがどんどん上がっていったので、すっかり脱帽したことがある。その時の経験からソウル・フィルも期待していたのだが、期待通りの出来だった。4曲とも実に洗練された演奏。チョン・ミョンフンという人、たぶん野球の監督で言うと巨人みたいなスターチームではなく、万年Bクラスのチームを鍛え上げて優勝争いまで持っていくことに生きがいを見出すような人ではないだろうか(かつてのソウル・フィルが「Bクラス」だったかどうかは知らないけど)。あるいはプロ野球より、高校野球の名将タイプ。

贅沢を言えば、もう少しオーケストラの持ち味が明確になればさらにいいのだが。つまりティーレマンとミュンヘン・フィル(残念ながら分かれてしまったが)を聞いた時のような、「こんなブルックナー、この人たちにしかできまい」と感じさせる域には、あと一歩足りないということ。でもそれは容易なことではないので、今後の楽しみということで。

終演後はスタンディング・オベーション。決して韓国人だけでなく、ロシア人も拍手喝さいで、私の両脇に座っていたロシア人のおじさんとおばさんは、2人と もブラボーを叫んでいた。

今のソウル・フィルなら、ヨーロッパの一流オケとも互角に勝負できる。繰り返すが、マリインスキーより上。ただ終演後、楽屋を訪ねて件のティンパニ奏者に「マリインスキーよりソウル・フィルのほうがいいと思います」と告げたところ、どうもお世辞を言っていると思われたらしく、「君は優しいねえ」と言われてしまった。いや、本気なのですが…。彼が言うには、「マリインスキーのオケは忙しいから」。まあ確かに、それはある。マリインスキーももっとリハーサルすれば、おのずと結果は変わってくるのに(と、何回このブログに書いていることやら)。でも乾坤一擲のソウル・フィルとルーティンワークのマリインスキーでは、前者のほうが聞きごたえがあるのは当然かも。

もう一つ、今日気がついたこと。今日はチョン・ミョンフンの指揮姿を見たかったので、左側面の一番上(Belle-etage)の席を取ったのだが、この席に座るのは、ティーレマンとミュンヘン・フィルの時以来。これまた驚いたのは、オーケストラの音がダイレクトに飛んできたこと。この位置って、こんないい席だったの!?ティーレマンの時に一度聞いているのに、何たる不覚。今度からは、この席を狙おう。

<追記>
現代音楽好きとして、チン・ウンスク(陳銀淑)のヴァイオリン協奏曲に一言。チン・ウンスクの曲を聞くのはこれが初めて。あくまでも素人の印象論だが、なるほど、天下のグラモフォンからCDを出すのもうなずける、確かな作曲のテクニックを持っていることが窺える。冒頭から何か変わった音がすると思ったら、何とスチールドラムを使用。オーケストラにスチールドラムというのは、初めて耳にした。でも結構調和している。

音楽は明確な旋律線はほとんどないものの、心地よい色彩感にあふれている。ソロパートもオーケストラパートも、決して技巧的に簡単とは言えないだろうが、全く危なげない演奏だった。

でもこういう音楽、あんまり好きではないなあ。難解なものこそありがたいという気はさらさらないけど、でも聞いていて「え、何これ」と、こちらの音楽観を突きくずしてくれるような衝撃を、特に現代の音楽には求めたい気がする。最近耳にした例で言うと、シュニトケの交響曲第1番とかクルタークの「カフカ断章」とか。あるいはロシアの前衛ジャズとか。その衝撃がここにはない。別にチン・ウンスクに限らず、タン・ドゥンあたりにも同じような不満を感じるので、現代音楽全体の問題かもしれない。

何年前だったか、ブーレーズがルツェルンの音楽祭で、前半、藤倉大などの新進の作曲家の作品を3つか4つほど演奏し、最後にヴァレーズの「アメリカ」を取りあげた演奏会をFMで放送していたが、私には最近の若手作曲家の作品よりも、ヴァレーズのほうがはるかにエネルギーがあり、刺激的で「現代的」だった。ブーレーズは若手作曲家に活を入れたかったのではないかと、疑ったほど。チン・ウンスクの作品を聞いて思い出したのは、その時のこと。現代音楽って、やっぱり袋小路にはまりこんでいないだろうか。

2010年6月4日金曜日

テミルカーノフのマーラー

  1. グスタフ・マーラー:亡き子をしのぶ歌
  2. 同上:交響曲第4番ト長調
ユーリ・テミルカーノフ指揮、サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団、トーマス・ハンプソン(バリトン)、イリーナ・マタエヴァ(ソプラノ)
6月4日 フィルハーモニー大ホール 19:00~


テミルカーノフを聞くのは、ペテルブルグに来てから2回目。最初に聞いたのは、ちょうど1年前だった。別に彼のことを嫌っているわけではなく、単純に接する機会がなかったのである。スケジュールが合わなかったり、有名なソリストと一緒にやるためにチケットが(こちらの感覚だと)バカみたいに高かったり。それにゲルギエフみたいに、しょっちゅうコンサートをやってくれるわけでもない。まあ、ゲルギエフの仕事量が多すぎるのだが。それでもテミルカーノフは人気があるのか、会場は立ち見も出るほどの超満員。

今回のコンサートのチケットも、決して安くはなかった。1番後ろの席で300ルーブル。目玉はもちろんトーマス・ハンプソンがマーラーを歌うということ。彼はもうすぐ55歳になるはずで、声のほうはどうかなと思っていたけど、声質自体には全く問題なし。ただ若いころからバーンスタインとウィーン・フィルをバックに歌ったりして、マーラーの歌曲に精通しているはずの割には、聞いていて今一つピンとこない。「そうか、マーラーはこういう風に歌うんだ!!」という目から鱗の感覚に襲われないのである。意外と淡白だなあというのが、正直な感想。

たぶん一つには、テミルカーノフ指揮のオーケストラが足を引っ張ったのではないかと思う。「亡き子をしのぶ歌」1曲目の冒頭、木管のアンサンブルがなんか変。旋律の受渡しが上手くいっていない。楽器のバランスも変。結局、オーケストラが曲に慣れていないのではないかという疑念は、最後まで払拭できなかった。

交響曲第4番も同様の傾向。部分的にはとても美しいのだけど(特に弦楽器が歌いだすと)、全体的にどこかアンバランスで、「天上」だとか「幸福」の雰囲気はあんまり出ていない。皮肉が効いているわけでもない。これだったら、ゲルギエフとマリインスキーの4番のほうがいい。

1月にワシーリー・ペトレンコの指揮で交響曲第3番を同じオケで聞いた時は、オケの個性が決してマーラーの音楽の妨げになっていなかったが、今回は違った。テミルカーノフが悪いのか、4番の特性なのかよく分からないが、とにかく今回もテミルカーノフの株は自分の中で上がらず。

2010年6月2日水曜日

「楽音の詩」

  1. クロード・ドビュッシー:雪の上の足跡
  2. アレクサンドル・スクリャービン:前奏曲第2番 作品74 (アントナン・アルトーの詩)
  3. オリヴィエ・メシアン:前奏曲第2番 (ゼノ・ビアヌ)
  4. スクリャービン:前奏曲第4番 作品11 (アルトー)
  5. ピョートル・チャイコフスキー:感傷的なワルツ (アルチュール・ランボー)
  6. ドミートリ・ショスタコーヴィチ:子守歌 (シャルル・ボードレール)
  7. セルゲイ・ラフマニノフ:前奏曲作品23-1 (ステファン・マラルメ)
  8. セルゲイ・プロコフィエフ:風刺第4番 (ボードレール)
  9. モデスト・ムソルグスキー:ビドロ (アルトー。ピエール・ジャン・ジューヴ)
  10. ショスタコーヴィチ:カノン (ジュール・シュペルヴィエル)
  11. 同上:エレジー (同上)
  12. ニコライ・ロスラヴェツ:前奏曲第4番 (アルトー)
  13. プロコフィエフ:風刺第1番 (同上)
  14. ロスラヴェツ:前奏曲第5番 (アラン・ボスケ)
  15. アレクサンドル・ラスカトフ:鎮静 (イヴ・ナミュール)
イリーナ・カタエヴァ=エマール(ピアノ)、ピエール・ラムレ(踊り、朗読)
6月2日 マリインスキーコンサートホール 19:00~


2010年はロシア‐フランス年ということで、フランスの音楽家がよくペテルブルグに来ているが、このコンサートもその一環。上記のピアノの小品に合わせて、フランスの俳優が詩を朗読しつつ、同時に踊り(パントマイムといったほうがいいかもしれないが)を見せてくれた。また舞台の背景には大きなスクリーンが設置され、淡い模様が浮かび上がる。舞台上手に設置された台では影絵も。全部で1時間ほどの上演。

こういう文学と音楽のコラボレーションって好きだが、いかんせん、フランス語が分からないことにはどうしようもない。ロシア語の字幕ぐらい出てくるかなと思ったが、それもなし(あったとしても、字幕をちゃんと追えたかどうか、はなはだ疑問だけれど)。静謐な雰囲気を味わうしかなかった。そのせいかお客さんもまばら。せっかくフランスから来たのに。言葉の壁さえ何とかすれば、かなり楽しめると思うのだが。

こういう演劇的要素が濃い試みは、、小さな劇場、それもちょっとうらぶれた感じのところでやると、いろいろと想像力をかきたてられて面白い気がする。

2010年6月1日火曜日

たまにはゲルギエフを誉めてみる

昨日、マリインスキーで働いている日本語のできる友人から電話があった。日本から来たゲルギエフへのファンレター(誕生日カードのもの。ゲルギエフは5月生まれ)を訳しているのだが、分からない個所があるという。

「4人の交響曲って何の事だか分りますか?」

当初は「?」だったのだが、あれこれ話しているうちに「マーラーの交響曲に『千人の交響曲』というのがありますけど」と私がぼそっと呟くと、「それだ!!」ということに。確かに手書きの日本語の場合、「4」と「千」は似ている。しかし作曲者の名前くらい書いておいてほしかった(笑)。

手紙の内容は、ゲルギエフの指揮する「千人の交響曲」を聞いて感激し、自分でも合唱に参加したくなって、今では東京の合唱団で歌っていますというもの。ゲルギエフとしても嬉しい話だろうが、でも彼はファンレターにわざわざ目を通している時間などあるのだろうか?そう思って、件の友人に聞いてみると、どうもゲルギエフはちゃんと目を通しているらしい。だからわざわざ訳させているのだとか。

おお、ゲルギエフもなかなかいいところあるじゃん。ひょっとしたら、日本が好きだから、ということも考えられるけど、でも素直に偉いと思う。

ところで最近、マリインスキーのコンサートホールに行くと、いつも録音用のマイクが立っている。あんなに毎回録音してどうするのだろうと思っていたが、なんでもゲルギエフの指示でフォンドを作っているらしい。しかもどうやって時間を作っているのか知らないが、ゲルギエフは結構それをチェックしているという話も。こうした超人的な働きぶりが、彼が世界的な名声を博することになった要因なのだろうと思う。