2010年12月12日日曜日

セルゲイ・ババヤンのリサイタル

  1. アルヴォ・ペルト:アリーナのために
  2. オリヴィエ・メシアン:「幼子イエスに注ぐ20のまなざし」より「聖母の最初の聖体拝受」
  3. ウラジーミル・リャボフ:幻想曲ハ短調「マリア・ユージナの追憶に」 作品21
  4. ヨハン・セバスチャン・バッハ:ゴールドベルク変奏曲 BWV988
セルゲイ・ババヤン(ピアノ)
12月12日 マリインスキーコンサートホール 20:00~

こういう演奏会を聞くと、ある音楽家が売れたり売れなかったりする要因は一体何なのだろうと思う。

もちろん、CDをどれだけ出せるかが大きいのだが、レコード会社と契約を結べるかどうかは、知名度によるところが大きい。つまり鶏と卵のような関係。結局、マスコミが取り上げるかどうかが大きいのだが、現代社会においてマスコミが持つ影響力はあまりにも大きいので、何でもかんでもマスコミのせいにしてしまうことに、かえって躊躇してしまう。「それはマスコミのせいだ」と言っていれば、間違ってはいないにしても、それはそれで思考停止に陥ることはないだろうか。

今日聞いたババヤンは、今年の4月に偶然聞いて、印象に残ったピアニスト。その点では、先日のマジャラと同じ。今日は前半で現代音楽、後半がバッハという意欲的なプログラム。しかしババヤンの名前がほとんど知られていないせいか、客席は寂しい状況。おかげで、タダで一番前の席に座れたが。

特に良かったのは前半。ペルト、メシアン、リャボフを連続して弾いたが、実に見事だった。最初のペルトからして、とても美しい音。生のピアノって、こんなに美しかったっけと思った。この人の演奏で、ドビュッシーも聞いてみたい。続くメシアンとリャボフでは、弱音と強音の対比が激しい。これも録音ではなかなか出せない。リャボフは初めて聞く名前だけど、メシアンと同じくピアノの技巧の限りを尽くした曲で、面白い曲だと思った。

いわゆる「精神性」を感じさせる演奏ではない。美しい音、とどろくような強い音、きらめく色彩感。でもそれがとても気持ちいい。子どものころ、ただ単にいろんな音を出すことが面白かったことを思い出した。

その点、後半のゴールドベルク変奏曲は、もう少し聞き手を引きつける工夫が必要かもしれない。繰り返しの際、装飾音符の付け方を変えたり、それはそれで面白かったが、何しろ50分の長丁場。それにこの曲には、グールドの新旧両盤を含め、様々な名演奏が存在している。その中で独自性を出すのは大変だ。

でも最後はとても満足した。疑問は最初に記したとおり、この人、もうちょっと名前が知られてもいいはずなのに、ということ。

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