2009年10月23日金曜日

ゲルギエフの「戦争と平和」を聞きにいったものの…

セルゲイ・プロコフィエフ 歌劇「戦争と平和」
ワレリー・ゲルギエフ指揮 マリインスキー劇場管弦楽団ほか

10月19日 マリインスキー劇場 19:00~


正直なところ、ペテルブルグに来て一番の期待外れは、ゲルギエフの指揮するマリインスキーであった。響は確かに非常に洗練されているし、ソロのうまさには舌を巻くこともしばしばだが、聞いていて興奮することがないのである。特にワーグナーの「リング」は退屈だった。あれで私の中のゲルギエフに対する評価は、格段に下がったと言っていい。でもこの人たちがもし本気になったら、さぞかし凄い演奏になるのでは、という予感は捨てきれずにいる。

プロコフィエフはおそらくゲルギエフが特に力を入れている作曲家だし、「戦争と平和」はテーマがテーマだけに、ゲルギエフもいつもよりは力を入れてくれるのではないか、とひそかに期待して見にいったが、これまた思いっきり期待外れ。「リング」の時もそうだったが、ゲルギエフはこちらの期待と反比例することが多い。期待しすぎということか。

このオペラは二幕構成で、第一幕は「平和」。20世紀のクラシックらしからぬ美しい旋律がたくさん出てくるが、起伏に乏しく、聞いていてどうも退屈である。こう言っては何だが、「エフゲーニ・オネーギン」(チャイコフスキー)の粗悪なコピーにしか聞こえない。実を言うと第一幕に退屈して、幕間に帰ってしまった。

期待外れだった理由は、おそらく予習用に買ったCDにもあるのだろう。今手元にあるのは、マルク・エルムレルがボリショイ劇場を指揮して1982年に録音したものだが、この演奏は「プロコフィエフってロシアのワーグナーだったのか!?」と言いたくなるぐらい、冒頭からテンションが高い。これだと第一幕も十分楽しめる。ところがゲルギエフは逆に、プロコフィエフの抒情的な側面を強調したかったようだ。その方向性自体はいいと思うのだが、緊張感が足りない。もちろん彼らは何度も演奏しているので技術的には問題ないのだが、それが悪い方向に出て「マンネリ化」の印象を受ける。熟知した曲であってもしつこいぐらいリハーサルを重ねたムラヴィンスキーなどとは対照的。

ゲルギエフの演奏に、「感動」する日は来るのだろうか?

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