ドミートリ・ショスタコーヴィチ 祝典序曲
同上 ピアノ協奏曲第1番ハ短調
同上 交響曲第5番ニ短調
マクシム・ショスタコーヴィチ指揮、サンクト・ペテルブルグ・フィルハーモニー管弦楽団、イリーナ・チュコフスカヤ(ピアノ)
10月4日 D.D.ショスタコーヴィチ名称フィルハーモニー大ホール 19:00~
先の日本の総選挙の際、「世襲」ということが話題になったようだけれど、クラシックの世界にももちろん、親子2代続けて音楽家という例は、いくらでもある。ただこちらはれっきとした人気商売なので、人気が出ないことには、親がどんなに有名でもどうしようもない。
ちなみに作曲家ドミートリ・ショスタコーヴィチの息子、マクシムは指揮者になったものの、「親の七光り」が通じなかった典型例みたいに言われて、こんな感じでおちょくられていたりする。指揮者としてよりも、ショスタコーヴィチの家庭での素顔を証言してくれる人として、珍重されている面も無きにしも非ず。そのマクシムが、父の作品をたくさん初演した名門オケを使って、父の名前を冠したホールで、どのように父の作品を聞かせてくれるのか、興味本位で聞きにいった。ただロシアでもそんなに人気がないのか、3分の2ほどしか客席が埋まっていない。東京だったら、どの程度埋まるだろう?
でも結論から言えば、「あれ、結構やるじゃん」。「親の七光り」でペテルブルグ・フィルを「振らせてもらっている」のかと思ったけれど、これだけオーケストラをバンバン鳴らしてくれれば、文句ない。
最初の祝典序曲のファンファーレからして、胸がスカッとするような音。続く木管も見事。やっぱりこのオケ、上手い。最後までバンダは入らなかったけど、全く物足りなさを感じさせなかった。マクシムの振り方は、あまり器用な気はしないけれど、でもなんだか楽しそうである。
ピアノ協奏曲は、ピアニストも上手かったけど、それ以上に上手かったのがトランペット・ソロ。ペテルブルグ・フィルの首席の人(残念ながら名前は未確認。祝典序曲は休んでいた)が吹いていたが、硬質ながら、実によく飛ぶ音。この人、相撲取りみたいに肥っていて、前からオケの中で吹きまくっていたので印象に残っていたが、今日はほとんど主役状態。最後のほうは、「ピアノと弦楽伴奏つきのトランペット協奏曲」になっていた。作曲者や指揮者の意図はともかくとして、これはこれで面白かった。
メインの交響曲第5番も、見事。第3楽章のような、泣くような音楽も良かったけれど、どちらかというとマクシムの本領が発揮されるのは、第4楽章の両端部のように、派手な部分か。この曲の最後のトランペット・パート、高音が続くので、有名なオーケストラですらへたばっていることが多いのだが、今日は例の首席奏者も加わって、ちゃんと鳴っていた。今までかなり、この曲のCDを聞いてきたけど、ここまではっきりと、最後まで金管が鳴っていたのは初めてかも。
なんだかトランペットばかりが活躍していたような書き方になってしまったが(苦笑)、もちろんオケ全体が素晴らしかった。特に今日はコントラバスの真上に座っていたので、オーケストラの重心が低く聞こえたのが、好印象につながったのかもしれない。
客席はいささか寂しかったものの、終演後はスタンディングオべーションが起こっていた。こちらの人は、日本に比べて割合すぐに立ち上がるとはいえ、名演だったことには間違いなさそうだ。
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