2009年10月6日火曜日

ゲルギエフ、謎のコンサート

ベラ・バルトーク 弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽

イーゴル・ストラヴィンスキー バレエ「カルタ遊び」

リヒャルト・シュトラウス 交響詩「英雄の生涯」

ワレリー・ゲルギエフ指揮、マリインスキー劇場管弦楽団

10月5日 マリインスキー・コンサートホール 13:00~

2日に、マリインスキー劇場に勤める知人から電話がかかってきて「ゲルギエフが突然、今度の月曜日の昼にコンサートをやることを決めました。チケットは確保してあるので行きませんか」と誘われた。曲目は、バルトーク、ストラヴィンスキー、R.シュトラウスだと言う。バルトークとストラヴィンスキーは大好きな作曲家だし、R.シュトラウスは大好きというわけではないが、でもゲルギエフに似合いそうだ。というわけで、本来の業務をほったらかして行くことに。でも家に帰って、ネットでプログラムを確認してビックリ。何だ、この難曲プロは!?それも、普段彼らが演奏しない曲ばかり。音楽監督の思いつきで、なんでこんなプログラムのコンサートが、急に実現するのだ。しかも平日の真昼間から。

実際に行ってみると、さすがに満席とはいかないものの、客席はまあまあ(3分の2ほど?)埋まっていた。どこから来たのだろう、この人たちは(て、私に言われたくないよね)。ただ例によって、13時開始にもかかわらず、リハーサルが長引いたらしく、13時10分ぐらいまで会場には入れなかった。音楽が始まったのは13時半。まあ、このホールで時間通りに演奏が始まったことなんてないけど。

マリインスキー劇場のオケはとても上手いけれど、明らかに練習不足の時も多いので、期待半分、不安半分だった。聞いてみた結果は、バルトークは×、ストラヴィンスキーは○、R.シュトラウスは△。

バルトークは、指揮者も含め、明らかに練習不足。なんでよりによって、バルトークの中でも最も難しい「弦、チェレ」を選んだのだろう?この曲、どんなに上手いオケでも、相当練習しないと聴衆に聞かせられるレベルに達しないのに。「弦、チェレ」は昔、先日亡くなった若杉弘が大阪フィルを振ったのを聞いたことがある。その時、大フィルももちろん悪戦苦闘していたが、若杉弘が見事なバトンテクニックで、難所を乗り切っていたのが印象的だった。この曲は、特にライヴの場合、スラスラ弾かれるよりも、難しいポイントでオケが崩壊せずに乗り切れるかどうか、そのスリルを楽しむのが醍醐味と言っても、あながち間違いではあるまい。ただ今回は、指揮者自身が未消化で、頼りにならない。むしろオケを救っていたのは、ティンパニ。前から、この人上手いなあと思っていたが、今回も1人、正確なリズムを叩きつづけて、それを基準に「あ、今ここにいるのね」という感じで、崩壊しかけたオケが立ちなおるといった具合だった。彼がきちんと叩いていたからオケが崩壊せずに済んだようなもので、彼がいなかったら、大変なことになっていただろう。

休息後、ストラヴィンスキーの「カルタ遊び」が演奏されたが、実は私は今まで、この曲の魅力が分からなかった。いかにも新古典主義期のストラヴィンスキーらしく、耳になじみやすいメロディーはあるが、聞きどころがどこなのか、つかめない。しかしゲルギエフの演奏では、和音の面白さ、ソロの妙技などが浮びあがってきて、割と面白く聞けた。180度イメージが変わったとはいわないまでも、この曲を見直すきっかけにはなったように思う。もう一度、彼の指揮で聞いてみたいし、ほかの新古典主義期の作品(「プルチネルラ」や三楽章の交響曲など)も、聞いてみたい。

最後はR.シュトラウスの「英雄の生涯」だったが(オーケストラ、よく体力持つよなあ…)、これは可もなく不可もなくといったところか。R.シュトラウスの場合、上手いオケが音符を正確に並べてくれればひとまず満足できる。その点、ゲルギエフとマリインスキーの演奏も悪くはないのだが、6月に聞いたアシュケナージ/ペテルブルグ・フィルの演奏のほうが、より輝かしく、ヴァイオリン・ソロも艶やかだったような気がする。そりゃあ、指揮者としてオケをコントロールする能力は、ゲルギエフのほうが上だろうけどさ。

タダでチケットをもらったこともあり、大きな不満はないのだが、でもなんでゲルギエフが急に、こんなコンサートをやりたくなったのかは、最後まで分からなかった。今後のレパートリー拡大に向けて、ちょっと腕試しをしたくなったのか?

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