2010年5月29日土曜日

マリインスキーの大失態

(直接見聞きしたわけではないにしろ、かなり確かな情報なので、書いておきます)

5月23日(日)にマリインスキー劇場でカルメンが上演された。ドン・ホセ役にイタリアからマッシモ・ジョルダーノが呼ばれ、アンナ・ネトレプコがミカエラを歌うという、かなり豪華な顔ぶれ(カルメンはナターリャ・エフスタフィエファ。指揮はトゥガン・ソフィエフだったが、マリインスキーでカルメンをやる時は彼が振ることが多いのである)。おかげで一番安い席でも1500ルーブルだったにも関わらず、チケットは完売。ところがこの日の公演、実は舞台裏でとんでもないことが起こっていたのである。

カルメンには複数の版があることはオペラファンにはよく知られた話だが、本番前日になって、ジョルダーノが練習してきた版と、マリインスキーが使っている版がまるで別物だということが分かったのである(それぞれがどういう版を使っていたのかは知らない)。もちろんジョルダーノに、一日でマリインスキーの版を身につけることなど不可能である。慌ててその場でつぎはぎのバージョンを作りあげ、演出もやり直す羽目に。劇場関係者は、本番の最中に演奏が止まるのではないかと真面目に心配していたらしい。幸い(?)止まらなかったそうだけど、客から最低でも1500ルーブル取って、そんなレベルの公演ってありだろうか。

おまけにゲルギエフが前日になって、「カルメンはオレが振る」と言い出す始末。別に「この窮地をオレが救ってやる」というわけではなく(だとしたら、ちょっとカッコいいけど)、単にネトレプコやジョルダーノの出るカルメンを振りたかっただけらしい。しかしこの騒動を知って、さすがにソヒエフに任せただとか。この話を聞いた時、ゲルギエフはどんな顔をしたのだろう。

ちなみにゲルギエフは、前日にエルガーのヴァイオリン協奏曲とドビュッシーの海を振っており、この日も昼間はラヴェルとマーラーを振っている。その上にカルメンまで振りたがるとは、何と言っていいのやら…。

閑話休題。いくら外部からのゲスト出演に慣れていないとはいえ(コンサートホールのほうはともかく、オペラのほうはほとんど身内だけでやっている)、版の違いを確認していないなんて、世界的なオペラハウスとして、あまりにもお粗末なミスではないだろうか。ジョルダーノのほうも確認しなかったのか不思議である。もしメトロポリタンあたりでこんなミスが起こったら、大騒動になるだろう。ところがこちらでは、特に大きな問題にはなっていない。これでも良しとするのがロシア??

とにかく、高い金を払って有名なアーティストの出演するオペラやコンサートに行っても、それに見合うものが得られるという保証はどこにもないという、典型的な話でした。

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