2009年11月6日金曜日

私的ジャズ週間~ペテルブルグでジャズを聞く


この一週間、気が付いたらジャズ漬になっていた。

モスクワでライブ・ハウス「ドム」に行って以来、ペテルブルグでもライブ・ハウスに行きたいなと思っていたものの、バタバタしてなかなかその機会が訪れず。近所にライブ・ハウスがあることは、知っていたのだが。そうこうしているうちに10月ももう終わりとなったので、とうとう10月30日に「今日行こう」と行くことにした。

行ったのは、JFCというジャズ・クラブ。立ち見で200ルーブル、座りたければ400ルーブル。お酒やコーヒーなどの値段は、そこらへんのバーと変わらない。むしろ安いぐらいかも。聞いたのは、アンドレイ・コンダコフ・トリオ。ピアノ、ベース、ドラムスという一般的な編成で、ノリのいいジャズを奏でていく。曲は彼らのオリジナル。3人とも上手いが、特にベースの人が上手い。時々見事な超絶技巧を見せる。指の動きが恐ろしく早いが、音がかすれることがない。音程も正確。もちろん、リズム感は抜群。近所のクラブにこんな上手い人が出演しているなんて知らなかったなあと思いながら聞いていると、休息前のメンバーの紹介で、ベースはウラジーミル・ヴォルコフだと言う。はっ!?ウラジーミル・ヴォルコフって、あのCDをいっぱい出しているヴォルコフ!?お店の人に確認してみると、そのヴォルコフらしい。

実はモスクワでロシア・ジャズのCDを集めはじめてから、ヴォルコフというベーシストに着目するようになったのだが、まさか近所のライブ・ハウスに出演しているとは思いもよらなかった。何たる不覚!!どうりで上手いわけだ。この人のCDは日本ではあまり手に入らないが、間違いなく現代ロシアを代表するジャズ・ベーシストだと断言できる。

JFCでは一枚300ルーブルでロシア・ジャズのCDも売っていて、JFCオリジナルの2枚組もある。どうせまた来るだろうと思いつつ、CDを3枚買って帰る。

JFCに行ったのが金曜日で、次は日曜日、ショスタコーヴィチ名称フィルハーモニーでジャズのコンサートがあると言うので、出かけた。ペテルブルグにおけるクラシックの殿堂でジャズを聞くのも面白いと思ったのだ。実はこのコンサート、ピアノ、ベース、ドラムスのメンツは金曜日と同じ。そこにギター、ヴィブラフォン、トランペットが変則的に加わる。ここでも彼らのオリジナル曲が中心で、私が知っていた曲はセロニアス・モンクの「べムシャ・スイング」だけだった(もともとジャズのナンバーなんてそんなに知らないけれど)。

前半は聞いていてイマイチ乗れず、「やっぱりジャズはライブ・ハウスで聞くのに限るのかなあ。でも昔、大阪のザ・シンフォニー・ホールで聞いたW.マルサリスとリンカーン・センター・ジャズ・オーケストラの演奏は楽しかったなあ」と勝手なことを考えながら聞いていたが、後半は面白かった。特にドラムスを欠いて、ピアノ、ベース、トランペットでやったいささかフリーな雰囲気の演奏が、緊迫感があって面白かった。実は同じメンバー(ピアノ:アンドレイ・コンダコフ、ベース:ウラジーミル・ヴォルコフ、トランペット:ヴャチェスラフ・ガイヴォロンスキー)によるCDを持っていて、家に帰って聞いてみたが、家で聞くとそれほど面白くない。CDと実演の違いなのか、曲の違いなのか。

それはともかく、これに味をしめて水曜日、ロシアは休日だったこともあって、もう一回ジャズを聞きに行くことにした。今度はジャズ専用のフィルハーモニーである。実際に足を運んでみると、「国立ジャズ・フィルハーモニー」と入口に書いてある。国立でこんなものを作っているのだ。

中に入ると、お客がみんな着飾ってきている。チケット代は800ルーブル。クロークにコートを預けた後、高級ディナーショーでもやるような会場に案内された。客の年齢層も、こちらのほうが高そうだ。飲んでいるのも、おしゃれなカクテルだったり(JFCはビール)。まさしく「大人の世界」。JFCの延長のノリで来た私は、すっかりたじろいでしまった。

でも演奏を聞いているうちに、そうした会場のことはあまり気にならなくなった。この日の演奏は、レニングラード・ディキシーランドというグループだったが、名前からして分かるように、彼らはクラシックなジャズの名曲を取りあげる。その点でも、JFCとは対照的。もう結成から半世紀が過ぎていて、都市の名前が変わっても、グループの名前は変えなかったようだ。さすがに演奏者の年齢層は高そうだが(クラリネットの人だけ若そうだった)、音だけ聞いていればそんなことには気がつかないほど、演奏は若々しい。曲も親しみやすいので、安心して聞いていられる。個人的にはバンジョーのおじさんの、だみ声のヴォーカルが気にいった。

この会場、客席の後ろにダンス用の空間があり、そこでフィルハーモニーのプロのダンサーが曲に合わせて踊る。別にプロのダンサーだけではなくて、踊りたければ普通の客も踊っていい。曲によっては、所狭しと何人もの人が踊っていた(なぜか私の隣に座っていた女性が、何度もダンスに誘われていた)。800ルーブルだとそう頻繁には来れないけれど、でも月に1,2回は来てもいいかも。

というか、クラシックのコンサートに行きまくっている上にジャズ通いまで始めてしまうと、収拾がつかなくなる気がするのだが…。

*写真はジャズのフィルハーモニーで踊りに興じる人たち。あえて、ピンボケした写真を掲載。

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