2009年11月21日土曜日

スナイダーがロシアのオケを指揮してブルックナーを

  1. ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番ハ短調
  2. アントン・ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調
ニコライ・スナイダー指揮、マリインスキー劇場管弦楽団、サリム・アブド・アシュカル(ピアノ)
11月21日 マリインスキー劇場コンサートホール 19:00~


ほとんど、物珍しさに惹かれて行ってしまったコンサートである。

まず、こないだヴァイオリンを弾いたスナイダーが指揮をするという。彼が指揮することを知らなかったので、この点に興味を覚えてしまった。しかしマリインスキー劇場のHPによれば、マリインスキーを指揮するのはこれで2度目。他にも、ミュンヘン・フィルやチェコ・フィル、フランス放送フィルなど、結構な名門オケを振っている。どうやら、「余技」ではないようだ。そのうち指揮者としてのCDも出すかも。

次に、ロシアのオケ相手にブルックナーを取りあげるという、その勇気(あるいは無謀さ)に驚嘆してしまった。ロシアでは滅多にブルックナーなどやらないのだ。そういえば、前回も書いたようにブラームスの交響曲も意外とやらないし、シューマンの交響曲もあまり聞かない(来月、フィルハーモニーで4番を取りあげるけど)。案外ロシアとドイツ・ロマン派の交響曲って、縁遠いのだろうか。

それはともかくとして、ブルックナーというのは指揮者の中でもその奥義を極めた人が取りあげるというイメージがあるだけに(朝比奈隆のイメージが濃すぎ?)、まだ若いスナイダーが、よりによってブルックナーに全く慣れていないと思われるマリインスキーのオケを振ってブルックナーに挑戦するということに、驚いてしまった。確かにソリストをやっていたら、ブルックナーなんて弾く機会がないけど。

さて、まずはベートーヴェン。スナイダーの指揮ぶりはあまり流麗ではなく、どちらかというと堅い印象を受けたが、でもオーケストラは結構充実した響きを出している。アシュカルはイスラエル出身の若手だそうだが、今日の演奏を聞いただけでは、特に良いとも悪いとも言いがたい。ベートーヴェンの3番をそれほど聞きこんでいないせいもあるだろうけど。むしろ、アンコールで弾いたブラームスの間奏曲のほうに、この人のタッチの美しさが活きていたように思った。

休息後、注目のブルックナー。全体を通して聞いた印象は、新鮮に響く部分もあったが、明らかに練習不足と思われる個所もあって、出来は大体予想の範囲内。ソロの出来もばらつきがあった。楽章を追うごとに荒削りになっていったところを見ると、おそらく楽章順にリハーサルをしていった結果、第4楽章で時間切れになってしまったのではないだろうか。スナイダーの解釈自体は興味深くて、堂々とした恰幅のいいブルックナーよりも、響やリズムを整理して、アグレッシブなブルックナー像を描きたかったようだ(たぶん)。驚いたのは、暗譜で振っていたこと。こないだエルガーを弾いた時は、楽譜を置いていたのに。普通逆だと思う(笑)。こちらの予想以上に、彼はブルックナーに精通しているのかもしれない。ブルックナーに慣れている、ドイツやあるいは日本のオケを振ったらどうなるだろうか、一度聞いてみたい。

ブルックナーという「聞きなれない」名前が敬遠されたのか、客席の埋まり具合は半分強といったところ。私の隣の席の女性など退屈したらしく、ブルックナーの終楽章の最中にiPhone で遊びはじめ、曲が終わる前に出ていった。朝比奈隆がブルックナーを振りはじめたころの日本も、(iPhoneはなかったにしても)こんな雰囲気だったのだろうか。

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