2009年11月7日土曜日

マリインスキーの描く「中国」~ストラヴィンスキーの「ナイチンゲール」ほか

イーゴリ・ストラヴィンスキー オペラ=オラトリオ「エディプス王」
同上 歌劇「ナイチンゲール」

ミハイル・アグレスト指揮、マリインスキー劇場管弦楽団&合唱団、ほか

11月7日 マリインスキー劇場 19:00~


ストラヴィンスキーの「エディプス王」はちょっと思い入れのある作品で、サイトウ・キネン・フェスティヴァルで収録された映像を子どものころ見て、強いインパクトを受けた。親からは、変な眼で見られたが(苦笑)。ただ思い入れがあるせいか、今日の演奏はいささか期待外れ。むしろ初めて聞く「ナイチンゲール」のほうが、楽しかった。ただしそれは、演出が楽しかったということ。

「エディプス王」は、歌手たちがラテン語に苦労していたようだったし、オーケストラの音もイマイチパッとしない。エピローグなんて、もっと派手にトランペットのファンファーレを鳴らしてくれたほうが好み。歌手とオケのアンサンブルも、ところどころずれる。演奏会形式だったら、もっと合っただろうが、これがオペラ形式で演奏する難しさか。エディプス役のティムチェンコの声は柔らかくて、それ自体は好きだったけど、威厳はあまり感じない。若くして大任を背負わされた王という感じである。

「ナイチンゲール」のほうは、ほとんど主役のコロラトゥーラを聞くためのような作品で、今日歌っていたティフォノヴァも悪くはなかったけど、でももっと上がありそうな気がする。それよりも楽しかったのは演出。カメラを持ってきて、カーテンコールだけでも写せばよかったとちょっと後悔したほど。昔の中国が舞台だけれども、京劇を模したと思われる衣装を着けていて、これが意外と頑張っていた。もちろん京劇そのものの衣装とは違うけれど、何となく雰囲気でデザインしたのではなく、ちゃんと勉強した跡がある。日本から来たものとして、それほど違和感はなかった。時々失笑してしまうような振る舞いがあったけれど(お辞儀のしかたとか)、まあいいでしょう。

舞台には黒と白と黄色のすだれ(らしきもの)が垂れさがっていて、よく見るとそれぞれ「死」「生」「富」と書いてある。またナイチンゲールの衣装には、胸のところに「生」と書いてある。場面によって白と黄色のすだれが上がったり下がったりして、オペラの方向性を暗示していた。漢字が読める人には分かりやすい演出だが、ほとんどのロシア人は気がつかなかったのではないか。でも関係のない漢字を演出で使われるよりは、ずっといい。

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