2009年6月26日金曜日

アシュケナージの「英雄の生涯」

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲ニ長調

リヒャルト・シュトラウス 交響詩「英雄の生涯」

ウラディーミル・アシュケナージ指揮 サンクト・ペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団、セルゲイ・ドガジン(ヴァイオリン)

6月25日 フィルハーモニー大ホール 19:00~

アシュケナージの演奏を生で聞くのは初めてだが、CDは何枚か持っているし、N響時代は何回もラジオで耳にした。正直、デュトワのころのほうが全体的には好きだったが、それでもときどきショスタコーヴィチなどで熱演を聞かせてくれたので、なんだか中途半端な形でN響をやめたのは残念だった。アシュケナージの言い分を信じると、N響の事務局の対応は、最後はずいぶんと失礼なものだったらしいが。

それはともかく、今回の演奏会、アシュケナージの好きそうなドイツプログラム。まずベートーヴェンの協奏曲だが、若手ヴァイオリニストのドガジンが上手い。挑みかかるような膝を曲げた姿勢で演奏するが、出てくる音自体はむしろ繊細で美しい。ただ第一楽章など、もう少し盛りあげる工夫があっても良かったかもしれない。ドガジンのように「美しさ」を追求するアプローチだと、第一楽章が長大なアダージョのように響き、第二楽章との区別がもう一つつきにくかったように思う。

アンコールでは、聞いたことのない超絶技巧の独奏曲を披露していた。この人、技術的には十分。

後半の「英雄の生涯」で、この街に来て初めて"レニングラード・フィル"の音を生で聞くことができたという気がした。冒頭の低弦からして、ズシリと来て、嬉しくなった。「英雄の敵」の木管のアンサンブル、ほとんど協奏曲状態の「英雄の伴侶」のヴァイオリン・ソロも見事。気のせいかもしれないが、「戦場」で、ファンファーレや小太鼓が"ショスタコーヴィチ"になってしまうのはご愛敬。 "レニングラード・フィル"時代と比べて、イマイチ評価の上がらない"ペテルブルグ・フィル"だが、まだまだ侮れない底力を秘めていることを実証。このことが嬉しい。

しかし"ペテルブルグ・フィル"からこれだけの能力を引きだしたアシュケナージの才能こそ、侮れないというべきかもしれない。ちょっと見なおした。これからも来てほしい。

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