セルゲイ・ラフマニノフ ピアノ協奏曲第1番~第4番+パガニーニの主題による狂詩曲
クン・ウー・パイク(ピアノ) アレクサンドル・ドミトリエフ指揮 サンクト・ペテルブルグ交響楽団
6月28日、29日 フィルハーモニー大ホール 19:00~
ラフマニノフのピアノ協奏曲全曲とパガニーニ・ラプソディーを2日間で全部弾ききるという、なんとも挑戦的なプログラム。このプログラムに挑戦できるピアニストは、今世界に何人いるだろうか。しかも挑戦するだけでなくて、最後まで綻びを見せなかった。
パイクはとてもきれいな音を出す。ピアノのことをあれこれ論じる能力はないけれど、ラフマニノフのびっしり書きこまれた音符が一音一音明確に、それでいてとても柔らかい音で、聞こえてきた。これが最後(難曲中の難曲、3番!)まで維持されていたのだ。5曲とも見事だったが、どれが一番良かったかと問われれば、「パガニーニ」だろうか。曲のロマンチックな部分とモダンな部分の両方が、上手く表現されていた。
問題はオーケストラ。このオーケストラ、個人技はともかく、アンサンブルの精度がイマイチ。リハーサルの時間が足りなかったのだろうかと思わせるほど、ピアノとの絡みが上手くいかない。先日、宮城敬雄の指揮で崩壊しかけたのも、あながち指揮のせいばかりでもなさそうだ。しかも洗練された音色を出すパイクに対し、このオーケストラは良くも悪しくも古いロシア的な音色を出す(特に金管)。その点でも、齟齬を感じた。
もし伴奏がアシュケナージ指揮のサンクト・ペテルブルグ・フィルだったら、さぞかし心に残る名演になっただろうと、勝手な想像をしてしまった。