2010年2月6日土曜日

バレエ・リュスの夢をもう一度~「シェヘラザード」と「ペトルーシュカ」

  1. ニコライ・リムスキー=コルサコフ:シェヘラザード
  2. イーゴリ・ストラヴィンスキー:ペトルーシュカ
ワレリー・ゲルギエフ指揮、マリインスキー劇場管弦楽団
踊り:ディアナ・ヴィシネヴァ、イーゴリ・ゼレンスキー、アレクサンドル・セルげーエフほか

2月6日 マリインスキー劇場 16:00~


いずれもバレエ・リュスでミハイル・フォーキンが振りつけたバレエ。ついでに言うと、両方ともニジンスキーが踊っている。今回の舞台は、その再現を目指したもの。普段はバレエなど振らないゲルギエフが、自らタクトを振るという点でも注目(オーケストラピットに入ってということ。もちろん、コンサートではよく振っている)。もしこれがバレエ・リュスの忠実な再現だとすると、なかなか興味深い舞台だった。

そもそもは「シェヘラザードをバレエ化するとどうなるんだ?」という素朴な疑問から足を運んでしまったのだが、これが面白かった。長い前奏曲(第1楽章)に続いて、シャーリアール王は狩りへと出発し(第2楽章)、王の不在の間に妻ゾベイダは奴隷と戯れ(第3楽章)、他の奴隷も巻きこんでどんちゃん騒ぎを繰りひろげるが(第4楽章のバグダッドの祭。海)、その最中に王が帰宅、奴隷を皆殺しにし、ゾベイダは自害して果てる(難破と終曲)というもの。原作の「千夜一夜物語」だと、こうして女性不信に陥った王は次々と娶った女性を殺していき、そこにシェヘラザードが登場、という筋の運びになっている。

実を言うと第2楽章までは、別にバレエ化しなくてもいいんじゃないかと思いながら見ていたが、第3楽章と第4楽章は見ごたえがあった。特に第3楽章の部分では、19世紀のバレエのパ・ド・ゥドゥとは明らかに違う、長い2人の踊り。どこがどう違うのか、バレエの知識が乏しいので上手く解説できないけど、華やかさよりもエロチックなものを感じたというのか。第4楽章にしてもそう。

フォーキンはこの振りつけのために東洋(具体的にどこだろう?)の踊りを研究したと、解説に書いてあったけど、確かに西洋式の踊りとは違う要素が入っているのは分かる。夏に見た「バフチサライの泉」が、やはりオリエンタルな世界を描いていながら19世紀バレエの延長を強く感じさせるのに対して、「シェヘラザード」のほうは、オリエントを梃子にしてバレエの新しい表現方法を開拓しようとしたのではないだろうか。同じ「オリエンタリズム」でも、バレエとしての方向性は全く逆である。

音楽は、第1楽章の後半にカットがあるほか、第2楽章の後、突然第4楽章の冒頭部が挿入され、その後第3楽章が始まる。それ以外は、とくに大きな変更はなかったような気がする。

「ペトルーシュカ」も、「シェヘラザード」ほどの驚きははなかったものの、やはり19世紀的な華やかさからの脱却を目指していると感じた。特に第1場、人形たちが登場する場面は見ごたえがあった。

バレエ・リュスの再現を目指したせいか、オーケストラは1911年版を使用。それともゲルギエフは、11年版を普段から好んでいるのだろうか。アンサンブルはやや緩い個所も見受けられたが、主役はダンサーなので、まあいいでしょう。

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