2010年3月10日水曜日

ロスラヴェッツを聞きにいく

  1. ドミートリ・ショスタコーヴィチ:1945年の交響的断章
  2. ニコライ・ロスラヴェッツ:「十月」独唱、混声合唱とオーケストラのためのカンタータ
  3. 戦時下の歌
アレクサンドル・ティトフ指揮、国立サンクト・ペテルブルグ・アカデミー交響楽団、スモーリヌイ寺院室内合唱団ほか
3月10日 フィルハーモニー大ホール 19:00~



ティトフという指揮者はマニアックな曲が好きらしく、今回のプログラムも珍品が2つ。ショスタコーヴィチの未完の交響曲に、ロスラヴェッツのカンタータとは。対照的に、後半は戦時中の歌謡曲をオーケストラ伴奏用に編曲したものを並べてきた。

まずショスタコーヴィチだが、スコアを見ると4管編成なのに舞台上は3管編成。2本必要なはずのチューバも1本だけ。どうもこのオーケストラ、メンバーがもともと少ないらしく、ヴィオラが5人でチェロが6人になっている。その少なさをカバーするだけの技量が個々の奏者にあればいいのだが、そういうわけでもなく、人数が少ない割に響が混濁しがち。まあ、こんな珍品を生で聞けただけでも、感謝すべきかも。

続いてお目当てのロスラヴェッツ。ロシアにおける12音技法の創始者みたいな言われ方もするので、猛烈な不協和音の吹き荒れる、アヴァンギャルドなアブナイ革命賛歌を期待していたのだが、これが全くの不発。社会主義リアリズムの作品と言われればそのまま信じてしまいそうなぐらい、分かりやすいサウンド。ショスタコーヴィチの交響曲第2番と一緒に初演されたらしいけど、確かにあの曲の後半の合唱部分と似ている気がする。1927年にこの曲が初演された時、すでにロスラヴェッツには当局から圧力がかかっていたらしいので、そのことも関係しているのかもしれない。

全体は5部からなり、それぞれ「蜂起」「10月25日」「魂よ、大声で叫べ」「急行」「コミンテルンへの挨拶」というタイトルがつけられている。1曲目と3曲目は混声合唱、2曲目はバリトン、4曲目はメゾ・ソプラノがそれぞれ歌い、終曲は全員での合唱となる。何と分かりやすい構成。

後半の歌謡曲集は、独唱者と合唱でちょっとクラシックぽく歌いあげる。私にはさっぱりなじみのない曲ばかりだったが(残念なことに、プログラムに曲名を書いてくれていない)、ロシアではよく知られている曲なのか、客席の反応がとてもいい。私の隣に座っていた60代頃と思われるおばあちゃんなど、一緒に口ずさんでいただけでなく、時々ハンカチで涙をぬぐっていた。そんなに思いいれのある歌なのか…歌そのものよりも、客席の反応のほうが興味深かった。

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