- ジャック・アレヴィ:歌劇「ユダヤの女」
10月26日 ミハイロフスキー劇場 19:00~
昨夜、日本から持ってきたプルーストの『失われた時を求めて』(鈴木道彦訳)の第1巻を読んでいたら、アレヴィの「ユダヤの女」のことが出てきた。そういえばこのオペラ、最近ミハイロフスキー劇場でやってるよなと思って調べてみたら、今日やることになっている。チケットもまだ十分余っているみたいだし、足を運ぶことに。実を言うと、1年半以上この街に過ごして、ミハイロフスキー劇場で音楽を聴くのは初めて(映画祭の時に、建物のなかに入ったことはある)。
ストーリーについては、グーグルで検索してもらえればすぐに出てくるのでここには書かないけれど、悲劇的な復讐劇。たぶん20世紀の作曲家(シェーンベルクとかショスタコーヴィチとかブリテンとか)ならば、不協和音を駆使して問題提起的なオペラに仕上げるのだろうけど、そこは19世紀前半のフランス。むしろ耳になじみやすいアリアや合唱満載の、典型的な「オペラ」になっている。ちなみに序曲が終わるとすぐに、オルガンのソロとともに祈りの合唱が流れるが、これってワーグナーの「マイスタージンガー」そっくり。もしかしてワーグナーは、ここからアイディアを頂戴したのかと思ったぐらい。
プルーストが言及しているぐらいだから、100年位前まではヨーロッパで広く受け入れられていた作品なのだろうけど、その後の100年間はさっぱり。しかし4年前にはDVDも出て話題になったし、こうしてロシアでも上演されているところを見ると、リバイバルの兆しがあるのだろうか。
演出は設定を少し変えていて、舞台は1930年代ヨーロッパの架空の国ということになっている。あからさまにナチスを想起させる人たちが出てきたりして、なんで1930年代なのか、意図は明白。衣装は豪華で、このように演出はそれなりに凝っているものの、どこか学芸会的な雰囲気が漂う。たぶんそれは演奏のせいで、特にオケが、何でこんな乾いた音しか出せないのかと思うくらい、音楽が盛り上がらない。だが聞いているうちに、ここのホール自体に問題があるのではないかという気もしてきた。少なくとも桟敷席で聞く限り、音の残響がほとんど感じられない。この体育館的音響が、学芸会の雰囲気を醸し出していたのではないか。マリインスキーで聞けば、もっとちょっとマシに聞こえた可能性はある。
実を言うと今日は疲れていたし、長丁場(休憩時間も含めて4時間近く)ということもあり、第3幕が終わった時点で劇場を後にした。
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