2010年10月7日木曜日

スナイダー、「エリア」を振る

  • フェリックス・メンデルスゾーン:オラトリオ「エリア」
ニコライ・スナイダー指揮、マリインスキー劇場管弦楽団&合唱団、ワジム・クラヴェツ(バス)、アナスタシア・カラギナ(ソプラノ)ほか
10月6日 マリインスキー・コンサートホール 19:00~

日本語のウィキペディアを見ると、メンデルスゾーンの「エリア」について「メンデルスゾーンの代表作であり、のみならずオラトリオ全体の中でも最も著名な作品の一つである」と書いているが、実際には彼の他の代表作、「スコットランド」、「イタリア」、「真夏の夜の夢」、ヴァイオリン協奏曲(メン・コンというあだ名まである)などに比べると、知名度で圧倒的に劣るのではないだろうか。今回足を運んだのも、単純に聞くチャンスが少ないと思ったからである。少なくとも、日本のコンサートのチラシで「エリア」の名前を見たことはない(ただし私は首都圏に住んだことがないので、首都圏に住んでいれば話は違うかもしれない)。

スナイダーの指揮については、金曜日の演奏会で少し未熟さを指摘した。今回はオケは小編成になるが、代わりに合唱と独唱が加わる。それに、ひょっとしたらマリインスキーのオケはこの曲を初めて弾く可能性がある。弾いたことがあるとしても、だいぶ前だろう。そもそもメンデルスゾーン自体、あまり取りあげない。したがって、また練習不足の演奏を聞かされるのではないかと不安に思っていたが、意外にも金曜日より出来が良かった。

確かに合唱は荒い部分があるし(特にソプラノ・パート)、独唱者もまだ歌を体得しているとは言えない(その中ではカラギナがかなりマシだった。この人、いろんなコンサートで見かける。ものすごくいいというわけではないが、大きな不満も感じさせない。安定した歌い手だと思う)。しかし全体的には、かなりテンションが高めの名演だった。そう、メンデルスゾーンはこういう劇的な大曲も書ける人なのだ。

スナイダーの指揮は、確かにまだ表層的な部分があるものの、意外にもマーラーの時より自分の意志をオケに浸透させている。この人、もしかしたら将来指揮者として化けるのではないか。今日の演奏はそんな期待を抱かせてくれた。

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