2010年11月20日土曜日

カワウソの子どもたち~ロシアの「前衛」音楽

  • ウラジーミル・マルティノフ:組曲「カワウソの子どもたち」
フーン・フール・トゥ(Huun Huur Tu)、Opus Posth、ムラダ(Mlada)、ウラジーミル・マルティノフ(ピアノ)
11月20日 フィルハーモニー大ホール 19:00~


ウラジーミル・マルティノフと言えば、今年の初めに聞いた「ガリツィアの夜」も変な曲だったが、今日聞いた「カワウソの子どもたち」はさらに壮大で変。両方ともフレーブニコフのテキストを基にして書かれているので、その意味では姉妹作だが、編成はかなり違う。

前回は、弦楽アンサンブルOpus Posth とポクロフスキー・アンサンブルの共演だったが、今回はポクロフスキーの代わりにムラダというペルミの合唱団と、フーン・フール・トゥというトゥヴァ系のエスノ・アンサンブルの共演。そのせいか、今日は東洋系(でも明らかに日本人ではない)の顔が会場で目立った。

この人たちで、80分ほどの音楽を奏でる。一応、マルティノフの作曲ということになっているが、明らかにフーン・フール・トゥが主体になって作曲した部分が、何カ所かある。私が気にいったのは、これらの個所。特に前半、ハイテンポながらしっかり歌って気持ちがいい個所がある。いかにも草原を駆け抜けるさわやかな風を思いおこさせる。

一方、マルティノフの個性が出た部分は苦手だ。普段クラシックを聞いているせいか、開放弦を大体に弦をひっかく奏法には、なかなか馴染めない。でもそれ以上に、マルティノフの打ち出す宗教的な雰囲気に馴染めなかった。特に合唱が加わると、荘厳な雰囲気が増すのだが、同時にある種の「胡散臭さ」まで出てくるのは、なぜだろう。あるいは、理屈っぽさが鼻につくというのか…。

でもどちらにしろ、現代ロシアを代表する「前衛」の音楽であることに、間違いない。なんだかんだいって気になるので、会場で売られていたDVD(昨年、ペルミで初演された時の様子を収めたもの)を、帰りに買ってしまった。

それにしても、今日はフィルハーモニーの大ホールがほぼ満席だった。なんでこんな実験的な作品に、こんなに人が集まったの?マルティノフ、あるいはフーン・フール・トゥって、一般のロシア人の間でも有名なのか?

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