2010年7月1日木曜日

ユンディ・リ in St. Petersburg

  1. フレデリック・ショパン:5つの夜想曲
  2. 同上:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 作品22
  3. 同上:4つのマズルカ 作品33
  4. 同上:ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調 作品35
  5. 同上:英雄ポロネーズ変イ長調 作品53
ユンディ・リ(ピアノ)
6月30日 マリインスキー・コンサートホール 19:00~


ショパンはイタリア・オペラとともに、私的食わず嫌いの代表例である。したがってこのコンサートも行くかどうか迷ったが、今の時期はちょうど時間があるし、ユンディ・リってどんなピアニストだろうという興味もあって、出かけた。

「アンダンテ~」までが前半だったが、ここまで聞いた時点では「確かに上手いですね」という程度。以前聞いたアファナシエフのように極端な解釈をすることもなく(それはそれで面白かったのだが)、まっとうに楽譜を音にしている。そもそもショパンを普段あまり聞かないので、ユンディ・リがどの程度すごいのか、よく分からないという感じだった。

ところが後半、前半とは明らかに曲への没入度合いが違う。普段はショパンを聞かないのに、この時ばかりはこちらものめり込んでしまった。曲の性格もあるのだろうが、特にピアノ・ソナタ第2番はデモーニッシュな雰囲気にあふれ、圧巻だった。

以前、とある日本の新聞に、ユンディ・リの弾くラヴェルのピアノ協奏曲について、「上手いのだが、それ以上のものを感じさせない」「最近こんな演奏が増えている」という批判的なコンサートの論評が載っていたことがある。この日の前半はこの評言が当てはまるが、後半は違う。後半のユンディ・リは、楽譜に書いてあること以上のものを表現していたと断言していい。そうか、「一流」とはこういう演奏をする人のことを言うのだと納得。

あと、ユンディ・リの特徴として、マズルカやポロネーズのリズムの特徴をあまり考慮せず、そのまま均等なリズムで鳴らす傾向があると思う。だが彼が興に乗ると、そういう理屈はどうでもよくなってしまう(私が、あまりショパンに思い入れがないせいかもしれないが)。

ユンディ・リがだてにこの10年間活躍しているわけではないことが、よくわかった。

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