2月23日 エルミタージュ劇場 19:00~
毎年この季節にやっている音楽エルミタージュという音楽祭の一環。この日ロシアは休日(祖国防衛の日)だったし、ノルウェーのジャズというので足を運んだ。ノルウェーのジャズ、好きなのだ。でもヘルゲ・リエンという名前は、実は初めて聞いた。
演奏は「まずまず」というところか。決して低い水準ではないが、ロシアにもノルウェーにもお気に入りのミュージシャンが結構いるので、「ものすごくよかった」というところまでは行かなかった。ただし、アンコールで弾いたテイク・ファイブは、聞きなれたメロディーが新鮮に響く見事なアレンジであり演奏だった。このことは特筆しておきたい。
でもここで書き留めておきたいのは、もうちょっと別のこと。最後の曲を演奏する前に、新譜の「Natsukashii」というアルバムからですが、と言って、「懐かしい」という言葉の解説をリーダーのリエンが始めた。「ナツカシイというのは日本語ですが、該当する英語がありません」と言われて、ちょっと驚いた。そういえば、確かにいい英単語が思いつかない。家に帰って、電子辞書(プログレッシブ和英辞典)で調べてみたら dear と出てきた。例文ではこのほか、familiar, homesick, long for 等いろんな単語が使われている。
じゃあロシア語はどうだろうと思って、研究社の和露辞典を引いてみると дорогой, милый。確かに、英語にもロシア語にもしっくりくる単語がないかも。ちょっとした発見だった。中国語とかはどうなのだろう。
もう一点。会場で「To The Little Radio」という彼らのアルバムを買った。買った理由は、日本語の帯がついていたから(笑)。ロシアで日本のCDを買うことになるとは。しかも日本より安いし(日本では2625円。こちらでは500ルーブル)。これ、ディスク・ユニオンが作ったアルバムだが、海外盤は出ていないということなのだろうか。ライナーノーツも、日本語だけ。
家に帰って最初聞いた時は、会場で聞いたアグレッシブな演奏と対照的な静かな曲ばかりだったので、物足りなく感じたが、改めて聞きなおしてみると、一本筋の通った緊張感にアルバム全体が貫かれていて、案外いいかもと思いなおした。特に6曲目の Penelope と最後の To The Little Radio が気にいった。
さて、このアルバムのタイトルにもなっている「小さなラジオに」だが、もとはクラシックの作曲家ハンス・アイスラーの作った歌曲である。どこかで聞いた名前だと思ってインターネットで調べてみたら、分かった。岡田暁生著『音楽の聞き方』(中公新書)で触れられていたのだ。あの本にはいろいろ言いたいことがあるのだけど、それはさておき、まさかこんなところで出会うことになるとは。リエンのアレンジで聞くと、より悲しみに満ちた美しいメロディーに聞こえる。