- エクトル・ベルリオーズ:劇的物語「ファウストの劫罰」
12月30日 マリンスキー・コンサートホール 19:00~
行こうかどうしようか迷ったけれど、年末はたぶん時間があるだろうし、「ファウストの劫罰」もそう簡単に実演では聞けないだろうから、というわけでチケットを買ってしまった。
年末年始のゲルギエフのスケジュールはほとんど異常で、12月19日から1月5日まで、12月21日、22日、1月1日を除いて、毎日マリインスキーのオケを指揮している。しかも曲目が大作ぞろいで、ムソルグスキーの「ホヴァンシチナ」を皮切りに、マーラーの交響曲の1~5番だとか、ベルリオーズの「トロイ人」「ファウストの劫罰」だとか、R.シュトラウスの「影のない女」「エレクトラ」だとか…。この人、影武者が(2人ぐらい)いるのじゃないだろうかと思いたくなる。少なくとも、十分なリハーサルをしている時間などないはずで、今日も練り上げられた演奏にはならないだろうと思っていたが、案の定、予想通りだった。
いくら団員数が多いとはいえ、これだけのハードスケジュールの中、ベルリオーズのスコアをちゃんと音にしてみせるゲルギエフとマリインスキーの技術力は見事だと思う。でもいつものことながら、そこで終わり。たとえば第3部の終わりなど、実に熱狂的というか、演奏次第によっては狂乱の音楽になるはずだが、今日は聞いていてまるで熱くなれなかった。あるいは第4部の地獄落ちの場面では迫力のあるサウンドを聞かせてくれたが、その前のファウストとメフィストフェレスの騎行の緊張感が今一つだったため、いくらパワーがあっても唐突感が否めない。最後の合唱も、もっと美しくできるのでは、という気がする。だってここは「天使の合唱」でしょ?
独唱者の中では、ウィーランド・ホワイトが見事。もともと、ホワイトが歌うというのがウリのコンサートだったが、その宣伝はうそではなかった。まさしく板についた海千山千のメフィストフェレスで、聞いていて楽しかった。これだったら、27日にあった彼のソロ・リサイタルに行ったほうが良かったかも。それに比べると、ファウスト(ダニール・シュトダ)は声量がイマイチで、完全にメフィストフェレスに圧され気味。メフィストフェレスの手玉に取られたあげく、地獄に落とされるのもむべなるかなという感じである。むしろマルグリート役のエカチェリーナ・セメンチュークのほうが、立派な歌声を披露していた。歌い方が、いささかオペラチックにすぎるような気がしたが、ここら辺は好き好きだろう。
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