2011年3月8日火曜日

ナクソス島のアリアドネ by ゲルギエフ

  • リヒャルト・シュトラウス:歌劇「ナクソス島のアリアドネ」
ワレリー・ゲルギエフ指揮、マリインスキー劇場管弦楽団、アンナ・マルカロヴァ(アリアドネ)、オリガ・プドヴァ(ツェルビネッタ)ほか
3月8日 マリインスキー・コンサートホール 19:00~

完全に初めて聞くオペラ。コンサートホールだったが、演奏会形式ではなく普通に上演。ただし前半はロシア語歌唱。後半の劇中劇の部分はドイツ語。

まず曲については、素晴らしいと思う。「ばらの騎士」に続く美の極致。ドイツ・ロマン派の最後の輝きとでもいおうか、ストラヴィンスキーが「春の祭典」を書き、シェーンベルクが無調で新しい表現を模索するなか、同時期にこんな作品が書かれていたのだと思うと、感慨深い。たぶん同時代の人にとっては、R. シュトラウスの世界こそが、最も親しみのある「現代の音楽」だったのだろうけど。

が、演奏について満足できたかと言われると、それは…。歌手は割と水準が高かったような気がする。特に要となるアリアドネとツェルビネッタの2人は見事で、「あれ、マリインスキーの歌手って意外と水準高いじゃん」と見なおした。実を言うと、マリインスキーの歌手って、あんまり評価していない。ドイツ語を歌っているはずなのにロシア語に聞こえるし、声量もあまりなかったりするし。でも今日は良かった。

オケは少数精鋭。出来不出来の激しいオケで、しばしば練習不足が露呈するが、今日はリハーサルをちゃんとやって来ていた。もともと各セクションのトップは上手いので、36名だといつもよりいいオケのように感じる。

では何が不満なのかというと、演奏の水準は低くないはずなのに、なぜか陶酔できない。そう、ゲルギエフの演奏を聞いていてよく不満になるのは、この「陶酔」という感覚になかなか出合えないからだ(少なくとも私は)。特に後半、めくるめく美しいアリアの波状攻撃に加え、わずか36名とは思えないオーケストラの色彩美がかぶさるのだから、もっと目頭が熱くなってもいいんじゃないの、と思ってしまった。

このプロダクションは今日が初演だったため、もしかしたら今後、もっと美しい演奏になるかもしれないが。

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