2009年7月3日金曜日

マイスキーのロシア・ロマンス

グリンカ、キュイ、グラズノフ、ルービンシュタイン(アントン)、チャイコフスキー、ラフマニノフの歌曲の編曲

ミーシャ・マイスキー(チェロ)、リリー・マイスキー(ピアノ)

7月2日 フィルハーモニー小ホール 19:00~

6月30日のコンサートを聞いて、これなら7月2日のコンサートはかなりいいのではないかと思い、翌日あわててチケットを購入。もはや一番高い700ルーブルの席が2つしか残っていなかったが、日本で買うことを考えればまだ安い。しかし、ロシア歌曲の編曲集なんてプログラム、日本で組めるだろうか。伴奏者は実の娘。顔の輪郭は父親そっくりである。あと目の感じが、似ているかも。

前半は、ラフマニノフ以外の歌曲を並べ、後半はラフマニノフを集中的に取り上げていた。何曲かアタッカで演奏していくが、違和感はない。改めて思ったのは、マイスキーの持つピアニッシモの魅力。高音のフォルテはややきつい音になるが(会場の響き方も関係しているのかも)、ピアニッシモはだれにも負けない。ヴィブラートのかけ方も絶妙。取り上げた曲の中で、知っているのはラフマニノフのヴォカリーズぐらいだったが、これがとても美しかった。特に繰り返しの際、2回目で大きく音量を落とすのだが、そこでマイスキーの本領が発揮。背筋がゾクッとするような音を出していた。ただ私は、しばしばマイスキーのチェロについて語られる際に使われる「魂」だとか「真実」だとかいう高尚なものよりは、もっと艶やかなものを感じた。別に悪い意味ではない。終演後、ヴォカリーズの楽譜を持って楽屋に押しかけ、サインを頼んだのだが、「ヴォカリーズ」と感慨深そうに呟いてサインをしてくれたことも忘れがたい。

娘は伴奏者としての役割をきちんと果たしていたのだが、ラフマニノフなど、もう少しピアノからの働き掛けも欲しいと思った。偉大な父を前に、それは難しいかもしれないけれど。

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