メタミュージック meta music (超音楽)~音楽を越境した音楽たち~
- ジョン・ケージ:クレド・イン・アス
- リュク・フェラーリ:偶然的出会い
- 同上:何もなし第1番(休憩)
- マウリシオ・カーゲル:エクゾティカ
- モートン・フェルドマン:ヴィオラ・イン・マイ・ライフ3
- ジョン・ケージ:クレド・イン・アス
甲斐史子(ヴィオラ)、大須賀かおり(ピアノ)、磯崎道佳(美術家)、伊藤隆介(映像作家)、梶谷拓郎(ダンス)、札幌舞踊会、Kitaraメタミュージック特設アンサンブル
2012年1月21日 札幌コンサートホールKitara 14:00~
今年最初の、というより10月以来の久々のコンサート。ここのところ忙しくて行く機会がなかった。
札幌の音楽環境って嫌いじゃないのだけど、不満は現代音楽のコンサートがなかなかないこと。ところがなんとジョン・ケージをテーマにしたコンサートがある。珍しさに飛びついてしまった。
客が来るのかと思っていたが、450席ある小ホールがほぼ満員。ダンスや映像とコラボレートして、視覚的にも楽しめるようにしていたのが大きいのかもしれない。実際、ジョン・ケージの作品におけるモダン・ダンスとの一体感は見事だった。演奏していた特設アンサンブルは、北海道教育大学岩見沢校の在校生と卒業生によるものらしいが、洗練されていて上手かった。
ただこの洗練された感じが、ジョン・ケージの望んだものなのかどうかは、ちょっと引っかかるものが…。ちょうど70年前に作曲されたCred in us は、初期の作品ながら、早くも偶然性を取り込んだ実験的な作品。ラジオから流れてくる音楽に始まり、空き缶を打楽器として使用する。いわばコンサートにおける日常性と非日常性の境界を突きくずすのが目的だったはずだが、今日のコンサートの中では完全にコンサートという「非日常」の中に取りこまれ、観客に「鑑賞」されていた。いいのだろうか、これで?いっそのこと、演奏の最中に携帯電話を鳴らして、みんなを「日常」に引きもどしてやろうかと思ったぐらい。もちろんやらなかったけど、ケージの場合、「作曲家の意図に忠実になる」というのが、ベートーヴェンとかとは違った意味で難しいと感じた。
その点ロシアで聞いたケージは、ある種の素人っぽさを残しつつ、ケージの意図に沿ってコンサートにおける日常と非日常の境界を曖昧にしてくれた。まあ、あの国のコンサートは、ベートーヴェンやマーラーの演奏中にも普通に携帯が鳴って、日常に引きもどされてしまうのだが。
何がともあれ現代音楽は好きなので、こういう試みを今後もジャンジャンやってほしい。