2011年6月10日金曜日

2年ぶりの札響

  1. ドミートリ・ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番ハ短調 作品35
  2. オットリーノ・レスピーギ:交響詩「ローマの祭」「ローマの噴水」「ローマの松」
秋山和慶指揮、札幌交響楽団、小曽根真(ピアノ)、福田善亮(トランペット)
6月10日 札幌コンサートホール Kitara 19:00~

帰国して1月以上。バタバタしていたけど、やっと落ちついてきた。

ペテルブルグでオケのコンサートに通っている間、ずっと思っていたのが、札幌に戻ったら札響をもう一度聞いてみたいということ。フィルハーモニーやマリインスキーに通うたびに、「ひょっとして札響のほうが優秀では?」と思ったが、記憶が美化されている可能性もあった。そこでぜひ、もう一度自分の耳で確かめたかった。しかも今回のコンサートは小曽根真がショスタコーヴィチに挑戦!!実は当初、セルゲイ・ナカリャコフも登場する予定だったのだが、震災の影響で中止。残念。レスピーギのローマ三部作も、クラシックに馴染みはじめた当初から聞いている曲なのに、生で聞くのは初めて。というわけで、結構楽しみにしていたコンサート。チケット代が一番安くても3000円というのには、ロシアの感覚に慣れたものからするとちょっと抵抗があったが、それでも4500円のチケットを買ってしまったのだから。

まずはショスタコーヴィチ。ずいぶんと生真面目に進む。ショスタコーヴィチのユーモアな側面が出た曲なのだから、もうちょっと遊び心が欲しいなあと思いつつ聞いていたが、終楽章になって、「遊び」が飛び出した。小曽根が楽譜にない音を弾いてオケと掛け合いを始め、最後のカデンツァでは案の定、即興的にやりたい放題。でも原曲がパロディのオンパレードなのだから、これはこれでいいと思う。

ただ圧巻だったのは、アンコール。先日亡くなったレイ・ブライアントにちなんで(あ、こないだまで生きていたんだと失礼なことを思ってしまったが)、小曽根がピアニストになるきっかけとなった曲、クバノ・チャントを弾いてくれた。まさしく水を得た魚というか、圧倒的なグルーブ感。この人はジャズの人なんだということを、実感した。クラシックのコンサートに行ってジャズまで聞けて、得した気分になったものの、自らの正体をばらすような曲をアンコールで弾いてしまって、はたして良かったのかどうか。

札響って、やっぱりマリ○ンスキーのオケよりずっと良いと思ったのは、後半のレスピーギ。たとえば最初の「祭り」の冒頭部。トランペットのファンファーレが気持ちいい。金管の迫力はロシアのオケのほうが上ではないかと思っていたが、そうではなった。札響も負けてはいない。個人技では負けるかもしれないが、札響の場合、音程が綺麗に揃っているので、音がよく飛ぶのだ。しかもレスピーギの凝った管弦楽法にも関わらず、いろんな音が耳に飛び込んでくる。もちろん指揮者がちゃんとスコアを咀嚼して、オケの団員がお互いの音を聞きあっているからだろうし、キタラというホールの音響のよさを実感した。ロシアのオケの場合、ちゃんとお互い聞きあってるの?と疑いたくなる時がある。

当然、課題もあって、主顕祭やアッピア街道では音が硬くなってしまったし、10月祭の最後はもっと甘美に歌ってほしいと思う。でも間違いなく、オケのレベルはマリ○ンスキーより上。別にマリ○ンスキーの来日公演に行く価値がないとは言わないが、日本のオケにももっと誇りを持ちましょうよと、声を大にして言いたい。

<余談>
コンサートに行く前に、タワーレコードの札幌店に2年ぶりに寄ってみたら、クラシックのコーナーが4分の3ほどに縮小されていた。ショック…。でもこれが時代の流れなのだろう。